16.あの世の時間とは

さて、あの世を理解するに際してきわめて難しいことは、死後の世界には時間がないということである。

「私が理解しているかぎりでは、こちらには時間というものがないのです」とローズは言っている。「私たちは、こちらでは時間を意識することがありません。こう言うと、皆さん方が理解に苦しむことも知っております。しかし実際こちらには、午後・夕方・夜といった区別がないのです。地上で言う時間は、私たちこちらの住人には何の影響も及ぼしません。結局、時間は地上の人間がつくり出した単なる目印・決め事にすぎません」

“時間”は、この世とあの世では根本的に異なるテーマである。「ジョージ・オールソン」はその問題について最も優れた説明をしている。

「オールソンさん、あなたはそちらで何もしていないと言われましたが、あなたはご自分の時間をどのように過ごしていらっしゃるのですか?」とグリーン女史が尋ねた。彼は答えた。

「ご存じのように、こちらの世界には時間は存在しません。時間の問題は、地上の人々を当惑させるに違いありません。地上の人々は言います。“いったい、あの世では時間はどのようになっているのだろうか?”と。

“時間!”――私たちは時間を自覚することはありません。時間はこちらの人間には何の意味もないのです。地上側の見方からすれば、私たちこちらの住人は“自分が興味を持ったことをして時を過ごしている”ということになります。確かにこちらの人々は、さまざまなことに興味を持ってそれをしています。しかし何をするにしても、こちらでは時間を自覚することがないのです。一時間、一日、一週間、一カ月、一年という意識がないのです。

われわれが唯一、時間を意識するのは、地上の皆さんと接触するときだけなのです。地上にいる皆さんの所へ戻ってくると、われわれはある程度、時間というものを意識(自覚)するようになります。皆さん方は言います。“誰それさんは今日、必ず交霊会にきて話をします。今日は彼の誕生日だから”と。

しかし、われわれは自分の誕生日には関心がありません。われわれは、地上にいる身近で親しい人間の考えを読み取ることができます。それによって、その日が自分の誕生日であったということを思い出すのです。ある人は言います。“金曜日はフレッドの誕生日だ”などと。それで私たちは次のように言うことになるのです。“金曜日は私の誕生日に違いありません”と。こうしたことがなければ、私たちは自分の誕生日を思い出すことさえありません」

「出生(誕生)についても同じことが言えます。ある個人の意識は、その人間が生まれる以前から存在していると私は確信しています。人間は成長・進歩にともない、物事の本質を知るようになっていきます。地上では生まれて大きくなるにつれ、自分の身のまわりのものの形・色・音などを知るようになっていきます。そしてこれらを通して徐々に自我をつくり出していくのです。

しかし誕生前にも自分が存在していた、という事実を否定することはできません。私は、人間は地上界に一度生まれるだけの存在とは考えていません。私は地上への誕生前に、間違いなくあの世にいたのです。そのときは必ずしも地上と同じ意識体としてではありませんが……。その私が地上に生まれ、自分自身の個性を進歩・進化させていくのです。そして、まわりの人々が私のことをオールソン誰それと、呼ぶようになるのです。

重要なことは、地上での生活は永遠という時間の中でのほんのわずかな瞬間にすぎないということです。私たちの本当の自我、本当の“私”という存在は、自分が今、自分自身であると自覚しているようなものではありません。真の自分の全体を知ることは、とても複雑すぎて難しいことです。しかし、それはとても興味のあることです」

訳注――あの世の「時間の問題」からさらに発展して、ここではスピリチュアリズムの中でも最も難解で高度な「再生の問題」にまで言及している。再生の問題は、あの世にいるスピリットの間においても意見が食い違うほどの複雑な一面を持っている。ここでオールソン霊の語った内容を理解するためには、多くの予備知識が必要とされる。紙面の関係上それをすべて説明することはできないが、簡単に言えば次のようになる。

すなわち、本当の自分(本自我とかインディビジュアリティーと呼ばれることが多い)という大きな自意識体が、事実存在するのである。しかし地上においては脳を介しての意識しか自覚できないため、そのすべてを知ることはできない。地上では“自分”という意識の“ほんの一部”を知ることができるだけなのである。

今、地上で“自分”と自覚している意識は、本来のもっと「大きな自分(意識)」のごく一部なのである。本当の自分は、今自覚している自分よりはるかに大きな存在であるが、悲しいことに地上にいるかぎり、自分のことさえも分からないようになっているのである。死後あの世で成長するにともない、この大きな自分に気づいていくようになる。

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