15.あの世の住まいと庭

あの世からの通信内容を詳しく比較してみると、結果的に次のような疑問が生じる。「単純な言葉を用いて、果たしてあの世の日常生活を伝えることができるのだろうか?」――何百という通信記録に目を通しての率直な感想を述べるなら、それは不可能だということである。

昼も夜もなく、地上のような主婦業も日常生活もない。これまで見てきたように、あの世では、地上でつくり上げた人生の内容によって自分自身の環境を創り出すようになる。ジョージ・ハリスにとって、レンガ積み以外の仕事など考えることができなかった。そして彼はあの世に行っても、相変わらずレンガ積みを続けていた。ライオネル・バリモアにとっても、演劇と係わりのない生活は考えられなかった。そして彼はあの世でも、やはり同じように演劇を続けていた。ローズは、お茶を飲むことのない生活は考えられなかった。彼女もまたあの世でお茶を飲み続けていた。

霊界通信の語るところでは、いかなる人間もあの世で同じ状態にとどまることはない。誰もがいつか“進歩・進化”するようになる。どのような人間でも、あの世の生活を通して(地上でもそうであるが)必ず変化するようになるのである。

さて私たちは、死後の世界についてどこまで知っているのだろうか?――あの世の住まいは? 庭に育っている植物は? あの世の食事は? 寝ることは? 仕事は? 楽しみは? そしてリラックス方法は?――交霊会における通信では、こうしたことについて、どの程度まで明らかにしているのであろうか? いずれにしても現場から送られてくる言葉が、最も正確であることは言うまでもない。

ウッズとグリーンは、ありとあらゆる質問を投げかけた。そして多くの答えを得てきた。しかしあの世からの答えには、あいまいで正確さに欠けるものが多くある。それはわざとそうしているためなのか、そうでないなら、地上のような時間のない“異次元世界”の出来事を地上の言葉で語ることが難し過ぎるためなのであろうか。


今、われわれのできることは、それらの通信をつなぎ合わせて総合的に理解することである。しかし、もしある人が既成宗教の教えを土台としてあの世のことを考えようとするなら、通信内容と教義との違いの大きさに驚かされることになるであろう。

「地上の人々が、絵画や宗教書で見るような事柄、例えば翼を持った天使などは事実とは全く違っています」とマリー・アン・ロスは語っている。

「こちらには地上人が考えるような天使はいませんし、天使の翼も天使のハープもありません。こちらにきたばかりの大半の人々の第一印象は、“ここは何と地上世界と似ていることか”ということです。ここには地上のありとあらゆるものの“レプリカ”が存在します」とビッグスの母親は語っている。

またアルフレッド・ヒギンス(ブライトンの絵かきで装飾家)も、次のように言っている。

「ある点では、こちらの世界は地上ときわめて似ていますし、自然的なのです」

マリー・イワンは、あの世では呼吸さえしている、と言っている。

「私は酸素がどうのこうのというようなことは知りません。しかしこちらには空気のようなものがあります。私は確かに呼吸をしているからです」

ジョージ・オールソン(ウッズの個人的な友人)がウッズに語った。

「私はこちらの世界のリアリティー(実在性)に驚きました。こちらにあるものは、液体や気体のような手ごたえのないものではありません。しっかりとした存在感があります」


他界した人間が、最初にリアリティー(実在性)を感じるのは、新しい住まいである。彼らの多くが、あの世の住まいのことを地上の“家”という用語を用いて表現している。ご存じのアルフ・プリチェットは姉に連れられて小さな家に行った。

「それはイギリスで見かけるような家でした。廊下から離れた所に小さな部屋がありました。そこはとても居心地がよく快適でした。素敵なイスと暖炉がありました」

ビッグスがおばのメイの家を訪問したときのことを思い出していただきたい。

「そこには同じような小さな家が立ち並んでいました。その中の一つが、おばの家でした。突き当たりには……、小さな庭……、彼らは私を中に案内して……。そしてすべてのものは真新しかったです」

テッド・バットラーはとても素晴らしい小さな部屋の中で目覚めた。

「窓には素敵なカーテン……、床には心地よい敷物……

テリー・スミスもあの世のものが地上ときわめて似ていることに気がついた。

「それは地上の居間のような所でした。素敵な小さな部屋で、素晴らしいカーテンとイスがあり、すべてのものはとても心地よかったです」

それに対しオスカー・ワイルドは、

「それはとても美しい家でした。私が心で願った通りの家でした」とだけ述べて、それ以上あまり詳しくは語っていない。


一九六二年、「エリザベス・フライ」と名乗る声がした。彼女は、クウェーカー教徒の博愛主義者であり、獄中囚人の取り扱いに対する改革者であった。その彼女があの世の住まいについて、もう少し詳しく述べている。

「こちらの家は低い木材造りで藁葺わらぶき屋根と言ったらいいでしょう……。私にとって家は、地上の皆さんと同じように大切なものです。人間はくつろぎを得ることのできる場所を好むものです。そしてそれはある程度、自分自身によって創り上げられるものなのです。こちらにいろいろなタイプの家があるのはそのためです。

私は今、自分が住んでいる家が気に入っています。なぜならそれは私に安定感や安心感を与えてくれるからです。私に十分な満足感を与えてくれます。私の家は決して大きくて豪華なものではありませんが、まさに私が望んでいた通りの家なのです。そこにある家具はみなシンプルです」

彼女の話はあまりにも美しい。しかし地上のハウス斡旋業者――彼らは売り家に特徴をつくり出し、要求の多い客に何とか家を売り付けようと懸命に努力している――には、彼女の述べる内容はあまりにも漠然としていて、わけの分からないものに感じられるに違いない。

その点、ローズの説明はずっと現実的である。彼女は自分の家について次のような詳細な説明をしている。

「私の家には四つの部屋があります。私一人で十分に手入れできます」

ここで言う四つの部屋とは、どのような部屋なのだろうか? 彼女はそれについては何も語っていない。唯一、彼女が述べている部屋は居間だけである。寝室や台所やトイレはあるのだろうか? 日頃の仕事部屋や書斎やビリヤードルームや勉強部屋などはあるのだろうか? こうしたことについては誰も述べてはいない。


あの世の声は、ほとんどの家に庭があると言っている。そして決まったように、それは郊外の田舎――地上の田舎よりはずっと美しいが――にあるのである。

「こちらの花は自然そのものです」とローズは言っている。「花は生命を持っていますし、人々は花を摘むことができます。そしてそれを部屋に飾ることもできます。しかしこちらにきてしばらくすると、そういうことをする人はいなくなります。もしあなたが家の中に座って戸外の花を見たいと思うなら、わざわざ家の外へ行く必要はありません。ただ見たいと思う花のことを考えるだけでいいのです。そうすれば、それを居ながらにして見ることができるのです。

またこちらには芝生もあります。それは心地よい弾力があって、とても美しい緑色をしています……。私は背の高い花が生えている所に行ったことがあります。そこの花々はあまりにも背が高く、ゆうに七、八フィートもあるのではと思ったほどでした。まるで花の林の中を歩いているようでした。トウモロコシが畑に植えられていました。しかしこれまで私は、刈リ取られたトウモロコシを見たことがありません。トウモロコシは、いつもそこに植えられているようです。……木々は美しく、ある木には美しい花が咲いています。そしてとてもよい香りがします」

ジョージ・ホプキンス(スセックスの農夫)も同様に、あの世の様子を感動的に述べている。

「こちらには田舎があり、湖や川……、また花々、鳥たち――皆さんが地上の自然界で思いつくものは、すべて存在します。ただしこちらには下等動物と言われているものは存在しません。私はこちらでアリのようなものは見たことがありません。地上ではアリはきわめて知性的要素を持った生き物のように言われていますが、こちらでは見たことがありません。また昆虫のようなものも見たことがありません。……こちらの世界では、地上の自然界のある部分は存在しないのです」

人間にとってイヤなものは目の前から消え失せる、という事実について、オスカー・ワイルドも繰り返し述べている。

「われわれにとって自然界の不愉快な部分は、存在しなくなります。例えばハエとかハサミムシのようなもの、そして人間に不快感を与えるようなものは、こちらには存在しません。こうしたものは消えてしまうようです」


テッド・バットラーは、次のような注目すべきことを述べている。

「こちらは快適な明るさと暖かさに包まれた世界です。私は最初、太陽の光が窓を通って射し込んでいるのだと思いました」

同じようにマリー・イワンも言っている。

「太陽が窓を通って輝いていました(実はそのとき、私がそう思っていたまでのことですが)。しかしそれは太陽ではありませんでした」

テリー・スミスは次のように説明している。

「太陽と思われるもの――彼は後になって“あの世には太陽はない”と言ってくるのであるが――それは私たち全存在・全生命体にエネルギーを与えている存在(神)からの光なのです。……その光は面白いことに、皆さんには奇妙に聞こえるかもしれませんが、影をつくらないのです」

テッド・バットラーは、さらに次のように言っている。

「私はこちらで、その光は地上の太陽とは全く関係がないことを聞かされました。しかし私は、何がその光の源であるのかは、いまだに知りません。それはいつか、こちらの科学者が明らかにしてくれるでしょう」


もし太陽がないのなら、暗くなることはないのか? あの世の人々が寝ることはあるのだろうか? それについて交霊会で語る霊の説明は一致していない。

「そちらには昼と夜がありますか?」ウッズがジョージ・ハリスに質問した。

「はい、そちらと同じで昼と夜があります。私は地上時代のように、ベッドに寝て目を覚まします」

ビッグスは他界後、母親からこのように言われた。

「あなたは休憩をとるべきです。ベッドに行ってください」

「ベッド! ではここではベッドで寝るのですか?」

「本来は寝る必要はありません。しかしあなたの場合はそうした方がいいのです」それで彼はベッドで寝たのである。

しかしビッグスは、地上からきたばかりの新参者であった。そしてジョージ・ハリスも、まだあの世でレンガ積みに精を出している段階の人間であった。それに対してローズは、あの世ですでに長く生活を送っている。その彼女は先の二人とは違ったことを言っている。

「もしあなたが寝たいと思うなら寝ることができます。しかし寝ることは必ずしも必要ではありません。……もしあなたが精神的に疲れていたら、ただリラックスするだけのことです。目を閉じて休みます。しばらくして再び目を開ければ、あなたはもはや疲れを感じなくなっています」

エレン・テリーは――彼女は最も進歩した長年の居住者であったが――次のように説明している。

「こちらには暗闇はありません。皆さん方の言う薄明かりのような状態はあります。とは言っても地上のようなものとは違います。休息のような時間もあります。しかし休息や睡眠は必ずしも必要ではありません」


あの世では雨が降るということもないようである。

「私は地上で“雨”と呼んでいるようなものを見たことがありません。またこちらには地上のような季節というものもありません」とローズは言っている。しかしそれも、そこに住む人間の“発達段階”(成長レベル)によるものらしい。

ジョージ・ハリスは、まだいくぶん地上のバイブレーションを残していたが、その彼は次のように語っている。

「さまざまな季節、雨、日光など……それはどれも自然そのものです」

「雨が降るとおっしゃいましたが?」とグリーンが驚いて質問した。

「はい、雨もありますし、地上のすべてのものがあります。地上と全く同じです。それは地上の“レプリカ”のようなものです。でもとても素晴らしいです」

しかし大半の霊は、「季節はない」と言っている。

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