9.家族・友人の出迎えがないときは?
生前、深い愛情で結ばれていた人たちは、私たちが死んだとき、あの世で必ず待っていてくれると「マリー・イワン」は言っている。マリーがもう少し地上で生きていたなら、彼女はもっと多くの人々と愛の関係を築き、死後、さらに多くの人々の出迎えを受けたに違いない。
「アルフ・プリチェット」は早くに姉と死別している。また「ビッグス」は母親に、「ホプキンス」は妻に、「マリー・イワン」は両親・姉・夫に先立たれている。彼らより先に他界した愛情で結ばれていた人たちは、その後、彼らが死後の世界にやってきたときに彼らを出迎え、世話をしてくれたのだった。
では結婚前に若くして戦争で死んだ若者の場合は、いったいどうなるのだろうか? 誰があの世での面倒を見てくれるのであろうか? 両親や親しい人たちは、まだ地上にいるのである。
一九六六年六月十六日、若い男性の声がした。その声は自分を「テリー・スミス」と名乗った。大戦中、イギリス巡洋戦艦フッドはドイツ戦艦ビスマルクの砲弾を受け、北大西洋の冷たい海中に沈没した。テリーはその沈没した巡洋戦艦に乗っていて水死したのである。
「それは突然のことでした。誰ひとり生存の可能性はありませんでした。全くの絶望的状況でした」
ベッティー・グリーンは、いつものように質問を切り出す頃合いを見計らっていた。
「テリーさん、あなたがまだ自分が生きていることに気がついたときの様子を教えてくれませんか? どのようなことが起きたのですか?」
「テリー・スミス」の死後の生活は順調であった。彼はいつか将来こちらの世界にやってくる父親や母親を出迎え、彼らのための住まいを準備してあげるようになるであろう。しかしあの世に初めて入ってくる者の中には、地上時代に人間嫌いで、他人との関係をほとんど持たなかったような者もいる。そうした人間は、あの世ではどのような道をたどることになるのだろうか?
こうした問題に対する答えが、一九六五年十二月六日に送られてきた。地上の人々がクリスマスの買い物にあたふたとしている時期であった。しわがれ声によって沈黙が破られた。彼は自分の名前を「ジョージ・ウィルモット」と名乗った。
「私はこの場所(交霊会)に何度もきたことがあります。そして地上とこちらの世界のやり取りを聞いていました。私にも話をするチャンスが与えられるかもしれないと期待していました。本当にチャンスはいつやってくるか分からないものです」
「ウィルモットさん、あなたのことを教えてください」グリーン女史が言った。
病院に運ばれて一週間後、ジョージ・ウィルモットは死んだのである。彼があの世に行って最初に出会ったのは、彼の古い知り合いジェニーだった。こう言って彼は笑った。
「実はジェニーというのは妻の名前ではないんです。私の愛馬の名前なのです」