11.地上の男女愛のゆくえ
もしあなたが二度と会いたくないと思う人がいるなら、あの世でその人と会うことは決してない。ハリーは母親と再会したが、その際、母親の語った内容は、地上で離婚を経験した者にとっては朗報である。
あの世では、気が合わない人と一緒に生活することはないことを実証するような別の通信が送られてきた。
一九六〇年八月、女性の声がした。その声はかつてイギリスの新聞の一面を飾ったことのある女性からのものだった。「アミー・ジョンソン」は一九三〇年、オーストラリアへの単独飛行に成功し、イギリスのトップ女性飛行士として名を馳せ、一躍当時の英雄になったのである。その二年後、一九三二年、彼女は青い目の酒好きなスコットランドの飛行士「ジム・モリソン」とロマンチックな結婚式を挙げた。しかし結婚生活は一九三八年に破綻を迎え、アミーはもとの姓に戻ることになった。
一九四一年一月の寒い霧の日、彼女は戦時空輸飛行士としてブラックプールからオックスフォード近くの飛行場に向けて離陸した。彼女が操縦していたのはイギリス空軍の双発練習機オックスフォードだった。しかし彼女は飛行場に到着しなかった。夜の闇がテムズ川の河口を覆うとき、練習機オックスフォードとパラシュートが発見された。彼女は二度と帰らぬ人となったのである。
一九六〇年八月六日、ウッズとグリーンは暗闇の中で、あの世からの声を待っていた。女性の声がした。そして自分を「アミー・ジョンソン」と名乗った。彼女は自分が死んだことに気がついたときの衝撃を
「ジムもここにきています」
「そうですか。ジム・モリソンさんは今、何か話すことができますか?」グリーン女史は尋ねた。
「私には分かりません。私はこちらでジムと会うことはあります。しかし一緒に生活してはいません。私はジムと仲が悪くなるのを恐れています。私たちはともに強い性格の持ち主だったと思います。私たちは、もうお互いに傷つけ合いたくありません」
彼女の話は尽きなかった。彼女の話には“男女愛”についてのきわめて意味深い内容が示唆されている。
マリーは、「もうこれ以上、語ることはできません。エネルギーがなくなりかけています。私はここで皆さんにお話しできて、たいへん嬉しく思っています。できたらまたすぐにでもきて話をしたいと思います」と言った。
が、彼女はそれから二度と現れることはなかった。おそらくあの世での幸せな生活が忙し過ぎるためなのであろう。