8.愛する人との出会い
もし、私たちの心がけが正しくて他人に害を与えるようなことがないなら、皆が「ビッグス」のような死後の世界を迎えることができるのであろうか? 美しい木々のある庭、そして家庭的雰囲気の中でのティーブレーク――こうした体験ができるのであろうか?
あの世からの通信は数多くあるが、残念ながらその内容に食い違いがあったり、語られる事柄が漠然としていて理解に苦しむということが多い。しかしベッティー・グリーン女史の徹底した質問のお蔭で、あの世の生活の一面が明確にされるようになった。われわれが死んだとき、いったい何が起きるのかということを、まるで地上の出来事と同じくらい、はっきりと知ることができるようになったのである。
先にリーズで車の事故で死んだ「テッド・バットラー」の死の直後の様子を見てきた。彼は女性のガイド(指導霊)とあの世の電車の中で出会ったのであるが、その女性がテッドに言った。「私の手を握りなさい。そして目を閉じ何も考えないようにしなさい。心を空白にしなさい」――次にテッドに何が起きたのだろうか?
ガイドの部屋
(テッド・バットラー霊)
彼女の言ったようにすることは少し難しかったですが、私はその通りにしました。どのくらいそうしていたのか分かりません。そのうち私は意識を失ったようです。次に気がついたとき、私は小さな部屋の中で、彼女と向かい合ってイスに座っていました。そこはとても素晴らしい所で、窓には
「私があなたをここへお連れしました。ここは私の小さな部屋です」
「本当に素晴らしい所です。でも私が見知らぬ女性の部屋にいることを家内が知ったら、何と思うか分かりません」――彼女は笑いました。
「今はそういうことは考えなくてもいいんですよ。それは今のあなたには関係ありません。お茶を飲みながら楽しくおしゃべりしましょう。そのうちどういうことか説明いたします」
「ここは本当に素晴らしいです」
「私は何年もの間、こちらの世界にいるのです。ちょうど世紀が変わる時期にこちらへきたのです。今は母と住んでいます」
「本当ですか? では、あなたのお母さんはどこにいらっしゃるのですか?」
「今、外にいます」
「外へ働きに行っているんですか?」――彼女は笑いました。
「仕事といっても地上の仕事とは違います。私の母は地上にいたとき働き者でした。それはそれはよく働きました。今、母は保育所のような所で働いています。母は子供たちが大好きです。生後間もなく死んだり、幼いうちに死んだ子供たちを、こちらの世界で育て面倒をみているのです。母はその仕事がとても気に入っています。母はすぐに帰ってきます。そうしたら一緒にお茶でも飲みましょう」
ガイドとお茶を飲む
私はそれを聞いて、「本当にお茶を飲むことができるのだろうか?」と思いました。先ほど地上にいる妻の所へ行ったとき、みんなでお茶を飲んでいました。そのとき私は一緒にお茶を飲みたいと思ったのですが、カップを持ち上げることができませんでした。これではお茶は飲めないと思って諦めたのです。
「あなたは今こちらの世界にいるのです。地上とは全く異なった世界にいるのです。今のあなたはこちらの世界での自然な状態なのです。そしてあなたのまわりのものも、すべて自然な状態なのです。ですから今あなたが手を差し出せば、それらをつかむことができます。あなたが地上にいる奥様の所へ行ったときの状況とは違うのです。今あなたはカップを持つことができますし、地上にいたときのようにお茶を飲むこともできるのです」
私は本当にお茶を飲みました。
「おいしいですか?」
「ええ、とてもおいしいです」
しかし地上の誰がこんなことを考えられるでしょうか? 私たちがここに座ってお茶を飲んでいるなんて、どうして信じられるでしょうか? そう思うとつい一人で笑ってしまいました。私がもしこんなことを言おうものなら、地上の人々はきっと私を気が狂っていると思うでしょう。
「地上の人間はこうしたことについて全く分かっていません。こちらの世界では、内面の成長にともない好みが変わっていきます。もしあなたが今、欲しいと思うものがあるなら、何でも自由に手に入れることができます。しかし実は、それは一時的なことにすぎません。あなたが“そうしたものはもはや必要ない”と思い始めるようになれば、それは自然になくなってしまいます。それが存在するのは、あなたがこちらの世界の現実にご自分を合わせられるようになるまでのことなのです。
ふだん私たちがお茶を飲むことはありません。こうして一緒にお茶を飲んでいるのは、あなたに徐々にこちらの世界の事情に慣れていただくためと、それがあなたの成長の役に立つと思ってのことなのです」
「それは本当にありがたいことです。ご迷惑ではありませんか?」
「いいえ、迷惑ではありません。それにこれは私の仕事の一部なのです」
「仕事?」
「はい、そうです。あなたのように地上に意識が縛られたままの人たちを助けることが私の務めなのです。そのために私は地上近くに降りて行くのです」
「今、何とおっしゃいましたか?」
「地上に意識が縛られている人たちです」
「地上に縛られている?」
「そうです。以前のあなたがそうでした。そのときのあなたは本当に哀れでした。あなたは自分の考えによって自分自身を地上に縛り付けていたのです。そして自分をその状態から解き放すことができませんでした。そうした物質に縛られたままの人々を解放し助けて差し上げるのが私の仕事なのです。そのために私はあちこち地上を回りました。
今、私はほんの少しですが人のお役に立っています。何千、何万というこちらの人々が、私と同じような仕事に携わっています。私はその中の一人にすぎません」
「テッド・バットラー」はあの世で落ち着いた生活を始めた。私たちのもとを去ってあの世でガイドの手引きを受けるようになった人々は、次にどのような体験をすることになるのであろうか? また自分は死んだのだということを理解した人々には、次にどのようなことが待っているのであろうか?
先に若くして死んだイギリスの詩人「ルパート・ブルーク」について取り上げたが、以下はその話の続きである。
彼は当惑して川を見ていた。どうして川の中に自分の影がないのかと不思議がっていた。
まばゆい光に包まれた大きな建物
(ブルーク霊)
私は川のそばに座っていました。頭はますます混乱してきました。突然、誰かが私のそばに立っているのに気がつきました。自分の身に、いったい何が起きたのだろうかと思いました。私は人の気配のした方を振り向きましたが、そこには誰の姿も見えませんでした。しかし、誰かがいることは感じました。そのうちはっきりとした声が聞こえました。
「私についてきなさい」――私は、声の持ち主が誰なのか分からないし、どこへ行くのかも知らないのに、ついて行けるわけがないと思いました。それから三回、声がしました。
「私についてきなさい。目を閉じなさい」
次に気がついたとき、私は全く違う場所にいました。そこはとても大きな建物の中でした。コンサートホールではありませんが、多くの席があり大勢の人々がいました。美しい音楽が流れていました。私は席に座って音楽に聴き入りました。その音楽は心に平和と静けさと安らぎを呼び起こすようでした。私は本当に穏やかな気分になりました。
そのうち徐々に、遠くに巨大なパノラマのようなものが見え始めました。さまざまな色彩がそこからまわりに放射されていました。淡い色から最も深い色まで、ありとあらゆる色相の光がパノラマから放たれていました。そして建物全体が輝くような美しさに覆われていました。
私は、先ほどから語りかけてくる姿の見えない人に話しかけたい、という気持ちになりました。しかし
「話してごらんなさい。心配しないで、できますから」
私は「ここは、いったいどこなのだろう?」と独り言を言いました。また声がしました。
「ここは、あなたを新しい世界へとお連れする場所です。ここでのバイブレーションがあなたを新しい生活に適応できるようにします。ここは“浄化場所”なのです」
私は自分の身に生じてきた変化に気がつきました。私のまわりにいた人たちも微妙に変化しているようでした。それについて説明することは、今の私の力ではできません。まるで身体全体がエネルギーと生命力で満たされたように感じました。そしてまわりのすべてのものが完璧に調和しているように思われました。しばらくして、そこにいた人々が徐々に立ち上がり、歩き回ったり話をし始めました。そこにいたのは最近死んだばかりの人たちで、こちらでの新しい生活がどのようなものなのか、教えを受けていたのです。
「私もこの人たちと同じなんだ」と思ったとき、さっきまで気配を感じていたものの姿が見えなかった人々が現れ始めました。彼らは本当はずっと私のまわりにいたのですが、私には見えなかったのです。その人々の中には男性も女性もいました。そのうちの何人かの女性が、ホールに座っていた女性たちの所に行きました。同じように何人かの男性がホールにいた男性たちの所に行きました。
ずいぶん後になってから分かったのですが、これらの人たちはあの世での新参者を助け導いて、徐々に新しい世界に慣れさせることを仕事としているということです。
地上人に伝えたい!
何人かの人と話をした後、私は公園のような所に連れて行かれました。そこにはさまざまな衣服を身にまとった人々がいました。私は辺りをぶらつきました。そのとき私の身体は自分の考えに応じて、いろいろ変化することに気がつきました。私は、木の下に座ってガイド役の男性に話しかけたことを思い出しました。こちらの世界でも何かものを書き続けることができるのか、彼に聞いてみました。彼は言いました。「もちろんあなたがそうしたければできます。ここでは、あなたが望むことは何でもできます。もしあなたが画家や音楽家になりたいと思うなら、それも可能です。それがこちらの世界で成長するための唯一の方法なのです。進歩するための道なのです」
私は、もしこうした体験を地上の人々に教えてあげることができたなら、どんなによいだろうと思いました。それで地上に通信を送ることはできないものかと一人の男性に聞いてみました。
「それは可能です。しかし今すぐというわけにはいきません」彼は笑って言いました。
「こちらにきた人は最初、みんな同じようなことを考えます。彼らは急いで地上の友人や親戚の所に戻って、こちらの世界がいかに素晴らしいかを伝えたいと思うのです。“死は誰にでも訪れるごく自然な出来事なのです。死を怖がる必要は全くありません”と。今は地上のことをあまり気にしてはいけません。そのうちあなたが地上に戻って人々のお役に立つときがくるかもしれません」
そして、それは四十二年後に実現した。彼の四十二年前の希望は、あの世からの通信として実を結んだのである。知識人としての彼の通信内容は、地上の私たちが知りたいと思う疑問に適切に答えを与えてくれている。
他にも、すでに他界している才能に恵まれた多くの有名人が次々と、フリントとウッズとグリーンによる交霊会に登場して語りかけるようになった。その中には、「オスカー・ワイルド」や「マハトマ・ガンジー」や「コスモ・ゴードン・ラング」(かつてのカンタベリー大主教)といった人たちもいた。
彼らは、私たちがこの世をいかに生きるべきか、というような問題について多くのアドバイスを与えてくれている。また、彼らが他界してからどのように知性的に進歩してきたか、などについても教えてくれているのである。
ホプキンスを出迎えた家族・知人
一方、先に述べた「ジョージ・ホプキンス」(スセックス地方の農夫)のように特別な教養に恵まれなかった人からも、地上に向けて貴重な情報が届けられている。
(ホプキンス霊)
そこには以前飼っていたローバー(犬)がいました。ローバーは私のまわりを走り回ったり、尾っぽを振ったり跳びはねたりしました。私はドアを開けて中に入りました。するとそこには、私の知っている人たちが十人以上も集まっていました。私の兄弟・姉妹・妻の関係者でした。彼らは私がここにきたことを喜び、歓迎してくれました。
しばらくおしゃべりなどして賑やかに時を過ごしました。犬の鳴き声も聞こえました。それは本当に心からの歓迎でした。彼らは、私のためにごちそうを用意してくれました(皆さんはこんなことを聞いて驚かれたでしょう)。私は、彼らがお茶を飲んだり食事をするなんて奇妙に思いました。すると彼らは言いました。
「初めはなかなか理解できないでしょうが、こうしたことは、あなたが地上にいたときに慣れ親しんできたことです。私たちは、あなたにくつろいでもらいたいと思っているのです。このことは、あなたがこちらの世界に落ち着くのに役立つでしょう。いずれにしても万事うまくいきますから心配しないでください。あなたは、ポル(妻)にもローバーにも、そして私たちにも会いました。これからも私たちは、時々会うことができるのです」
突然、私はこれまで見慣れた自分ではなく、初めて見る自分の姿に気がつきました。私はみんなに言いました。
「素晴らしい! どうしてこんなことが起きるのですか?」――彼らは言いました。
「今は何も言うのはやめましょう。しばらく何もしないでいましょう。ただリラックスして休んでください。こちらの世界にきたショックを癒してください」
「私には分かりません。今の状態はすべて自然で現実感があります。ここにはあなた方――私の愛した人たちや、私の人生で大切だった人がいます。みんなが私を待っていて、私を幸せな思いにさせてくれます」
無知な地上人
「地上でも、死後の世界のことを当然知っていてしかるべき人がいます。特に牧師はそうです。私は熱心な教会員ではなかったし、まじめに教会へ足を運んだわけではありません。そのことは自分でも認めています。しかし牧師は、死後の世界について何も知りませんでした。これでは彼は誰も慰めてあげられません。何かが間違っていると思います」
「その老牧師を責めてはいけません。彼は難しい状況の中で、彼なりに精いっぱいのことをしてきたのですから」
それから彼らは私に、その牧師はキリスト教で言う“善人だけが天国に行き、終末の世に地上に戻り肉体を持って地上で生きるようになる”という間違った考えを持っていたことを述べ始めました。
「もちろん彼より広い視野を持った人も大勢いるでしょう。が、その牧師は昔ながらの考え方しかできない人間でした。今日では多くの人たちが、もっと進んだ考え方をするようになっています。しかし死者との通信とか死後の世界といったことになると、ほとんどの人間は“無知”なままなのです。
もちろん皆がみな、交霊会を悪ふざけと取っているわけではありません。現に私たちのある者は、交霊会に出現して死後の世界に関心を示す人たちと接触を持ち、メッセージを送ってきました。しかし、そうした人たちは本当に限られたごく一部の人間にすぎません。また現実問題として、こちらの世界との交信を可能にしてくれる霊媒もほとんどいないのです。もしいたとしても、あまり役に立たないことが多いのです。
さらにキリスト教会ときたら“哀れ”としか言いようがありません。彼らは死後の事実について全く知らないのです。彼らにとっては二千年前に起きたことだけが真実であって、それ以来、同様のことは決して起きないと決めつけているのです。彼らは大昔に生きているだけで、現在や未来に同じことが起きるとは認められないのです」
この本で紹介した他界者にはある共通性が見られる。「ビッグス」は死後、母親に連れられて次のステップへと進んで行った。「ホプキンス」は彼の妻に、「プリチェット」は友人に、「バットラー」と「ブルーク」は彼らのために送られたガイド(指導霊)に連れられて、次の世界へと進んで行ったのである。
一九六六年八月、「マリー・イワン」と名乗るスコットランド訛りのある若い女性が交霊会に現れた。彼女は意識を失い、あの世で目覚めたのだった。
あの世の病院での目覚め
(マリー・イワン霊)
私は目覚めました。そして病院のような所にいることに気がつきました。「ここはどこだろう?」私は確か自分の家にいたはずです。私は病気で床につき妹が私の世話をしてくれていました。目覚めた場所は、とても清潔で気持ちのいい所でした。すべてのものが新鮮で生き生きとしていました。また、そこにいた人々もみんな静かで落ち着いていました。太陽の光(そのときの私にはそのように思えたのです)が窓から射し込んでいました。壁には絵が掛かっていました。私は「これは不思議だ!」と思いました。
それからとても優しそうな女性が私の所にきて言いました。「あなたはもう少し休んだ方がいいですね。そうしたらすぐに元気になるでしょう。目が覚めてしばらくしたら、あなたの知っている人たちが会いにくるでしょう」
私は「これは奇妙だ。私は確か家でベッドに寝ていたはずなのに今この病院にいる。私はきっと意識を失い、誰かが私をここへ連れてきたに違いない」と思いました。それから少ししてから、まわりで寝ている人たちを見回しました。私の隣のベッドには金髪のかわいらしい小さな女の子がいました。彼女はベッドに座っておしゃべりをしていました。それから私に自分の持っている人形や本などを見せてくれました。
「ここは気に入りましたか?」と女の子が言いました。
「とても幸せよ。ところであなたはどこが悪いの?」
「私はジフテリアだったの」
「ジフテリアだったなんてとても見えないわ。すごく元気そうよ。ほほもつやつやして健康そのものに見えるわ。この病院にどのくらいいるの?」
「さっききたばかりなの。ここはとても楽しいわ」と女の子が言いました。
姉ケイトの出迎え
それから何と! 姉が私の方にやってくるのが見えました。彼女は若くして死んでいます。そのとき私はまだ十二才でした。私たちは彼女のことを「ケイト」と呼んでいました。「これは奇妙なことだ! ケイトがここにいるはずがない。ケイトは昔、死んだのに……」
でもそれは確かにケイトでした。彼女は大きな花束を抱えて私の方にやってきました。花にはまだ露が残っていて、とても新鮮でした。彼女は言いました。「この花束はあなたに持ってきました。あなたがこちらにきて、みんなとても喜んでいます。父も母ももうじききます」
「いいえ! こんなことがあるはずがありません。あなたはどうやってここへきたのですか? あなたがここにいるはずがありません。あなたは死んでいるのですから」
「そうです、私は死んでいます。そしてあなたも死んでいるのですよ」
「どういう意味ですか? 私が死んでいるなんて」
「本当にあなたは死んだのです」
「そんなはずがありません。私はちゃんと生きています。そして私は今、病院にいます。……しかしあなたはどうやってここへきたのですか? 誰かあなたがドアを開けて部屋に入ってくるのを見ましたか?」
「みんな私がドアから入ってきたのを見ています。ここにいるのは、みんな死んだ人たちばかりなのです」
「私には何がなんだか分かりません」
隣のベッドにいた女の子が、私をじっと見つめて言いました。
「それ本当なの? 私たち死んだの? あの女の人も本当に死んでるの?」
「彼女は私の姉なの。そして本当に死んでるの。だから私たちも死んだに違いないわ。でも私たち、ちゃんと生きている、何がなんだか分からないわ」
「私はあなたをここから連れ出すためにきたのです」とケイトは言いました。
「それはどういうこと? それなら病院の人に私の外出許可をとらなければなりません。私は今、とても健康です。これまでこんなに具合がよかったことはありません」
「もちろんそうです。あなたは完全に健康です。どこも悪いところはありません。病気だったことは早く忘れてください。あなたはもう病人ではありません。とにかく私はこの部屋の担当の婦人に会いましょう」
担当の婦人と姉が少し話をした後、私はベッドから降りることが許されました。
「私の衣服は?」と私が言うと、ケイトは笑いました。
「心配しないで。あなたはもう着ていますよ」
「どういうことですか?」私は自分自身の姿を見て驚きました。何と! 私は服を着ているではありませんか。私はそれをここへ持ってきたことも、それを着た覚えもありません。私は美しいガウンを着てベッドのそばに立っていました。そのガウンは薄青色でサッシュが付いていて、首のまわりには小さなレースが付いていました。私は何がなんだか分かりませんでした。おまけに私の髪まできれいに
ケイトは笑って言いました。
「とても素敵よ。あなたは知らないでしょうが、私が服を着るお手伝いをしたのです。髪の毛もそうなの。それは私の思念でやったの」
「どのようにしたの? 思念だけで何かをすることができるなんて考えられません」
「もちろん、あなたにもできるようになります。慣れるまでに少し時間がかかりますが。でもいったん身に付けば、あなたのしたいことはどんなことでも思念ひとつで、できるようになります」
「本当ですか?」
「本当です。とにかく私たちは出かけましょう。母や他の人たちに会いに行きましょう」
「さっき、お母さんがここへくると言ったはずですが」
「彼女はたぶん下で待っているでしょう」
私たちは美しい階段を降りて行きました。それはまるで大理石で造られているようでした。そこでは大勢の人たちが歩き回っていて、みんなとても健康そうに見えました。建物はすみずみまできれいに手入れがなされていました。
【マリー・イワン霊の声中断】
「マリーさん、続けてください」グリーン女史が促した。「あなたの話はとても貴重です」
マリーはまた話し始めた。
レセプションセンター
私たちは階段を降りて行きました。そして玄関の外に出て、さらに階段を降りて美しい庭に出ました。私はこれまでそのような美しい場所に行ったことがありませんでした。そこにはさまざまな人たちがいました。子供たちもいて走ったり遊んだりしていました。そのとき、ここにいるすべての人たちがその場に溶け込んでいるのに、自分だけが場違いのような気がして奇妙な感じがしました。
「みんな、ここに長い間いるのですか?」と姉に聞いてみました。
「いいえ、地上の時間にすればわずか数日にすぎません。彼らはこちらの世界に順応しようとしているのです。そして友だちや親戚の人たちが迎えにくるのを待っているのです。ここはいわゆる“レセプションセンター”で、多くの人々がやってきます。新しい環境に慣れて迎えの友人がくるまで、ここにいるのです。
最後には彼らは全員ここを出て行きます。普通は夫や妻のもとへ、もし結婚していないなら、おそらく父親や母親の所へ行くようになります。心から愛情で結ばれている人たちは必ず庭で待っていてくれます。もちろん私があなたに会いに行ったように、わざわざ迎えに出向くこともあります。
誰も死を恐れる必要はありません。なぜなら、それは最も素晴らしい出来事だからです。すべての人にとって喜ばしい出来事なのです。死を心配する必要は全くありません」
マリー・イワンは、新しいあの世の生活について語り続けた。グリーン女史は、彼女との話を切り上げようとした。
「あなたはそちらに行ってから地上時代の知り合いに会いましたか?」
「もちろん会いました。結局、私は母と生活をともにするようになりました。そしてそのあと夫と一緒に住むようになりました」