(6)スピリチュアリズムにおける心霊現象の本質と意義

以上のように、さまざまな種類の心霊現象を見てきました。心霊現象には、この他にもポルターガイストやラップ・心霊念写などがあります。また霊能者の霊能力によって引き起こされる霊視・霊聴・未来予知・透視といった超常現象もあります。心霊現象や超常現象を扱った研究資料は膨大な量にのぼり、とてもそのすべてを紹介することはできません。ここで取り上げたのは、その中のごく一部にすぎません心霊現象や超常現象についての詳しい説明は、別の機会に譲ることにします)

本章の最後に、スピリチュアリズムにおける心霊現象の意義をもう一度確認します。

近代心霊研究は、スピリチュアリズムの一部分にすぎない

スピリチュアリズムの初期には、心霊現象や超常現象に対する科学者の科学的研究が人々の注目を浴びることになりました。それが現在にまで、“スピリチュアリズムとは近代心霊研究である”との一面的で偏狭な定義を定着させることになってしまいました。

しかし心霊研究は、スピリチュアリズムの中のほんの一部分にすぎません。この章で紹介したような優れた心霊現象は、すべて霊界からの周到な準備のもとで引き起こされたものです。きわめて高い霊格を持った高級霊の指導のもとで、明確な目的のために、計画的に演出されたものなのです。心霊現象と近代心霊研究は、霊界サイドから仕組まれた「スピリチュアリズム普及計画」の一つのステップに他ならなかったのです。

物理的心霊現象の演出は、低級霊の得意分野

心霊現象を理解するうえで大切なことは、物理的心霊現象のような物質的要素の強い現象は“低級霊”にも演出できるものである、という点です。巷でしばしば騒がれるような物理的心霊現象の大半が、高級霊ではなく低級霊によって引き起こされています。低級霊は、地上人の程度の悪い欲望や利己的で物質的な欲求につけ込み、地上人をからかって驚かせようと、それらしく演出します。そもそも高級霊が、地上人の程度の悪い物質的な欲望に耳を傾けたり、意味もなく地上人を驚かせるようなことをするはずがありません。

その一方で地上世界には、人々を騙して利益を得ようとする“悪徳霊能者”がいつの時代にも存在します。そうした霊能者は低級霊を引き寄せ、次々と華々しい物理的心霊現象を引き起こします。それを見た一般の人々は驚き、恐れおののいて、その霊能者を神の化身であるかのように思い込むようになります。こうして低俗な霊能者を教祖とする宗教教団やグループがつくられることになるのです。低級霊によって支配された宗教教団では、初めはご利益(物質的欲望)が次々と叶えられるような状況が展開するため、人々は信仰に夢中になります。そして宗教教団全体が“低級霊の餌食”にされるようになってしまいます。やがてそれまでのご利益をすべて台無しにするようなひどい仕打ちが低級霊によって引き起こされるようになり、教団内に憎しみや対立が生じ、多くの信者が絶望や苦しみの中に突き落とされることになります。

一般の人々は、心霊現象や超常現象といった不思議な出来事に強い関心を持っています。そうした不思議な力によって自分の人生に奇跡がもたらされ、幸せになることができると安易に考えます。せっかくのチャンスを逃したら大損とばかりに、他人を押しのけてでもご利益にあずかろうとします。不思議な現象を起こす卓越した霊能者がいるとの噂はすぐに広まり、連日人々が押しかけるようになります。こうして世間に“ニセ霊能者”や“悪徳霊能者”がはびこることになるのです。

病気が治ることよりも、霊的覚醒の方が大切

後述する「シルバーバーチ」という高級霊が、世界的に著名な心霊治療家ハリー・エドワーズに対して、次のように述べています。

「魂に霊的悟りをもたらせることこそ心霊治療の真髄だからです。身体的障害を取り除いてあげても、その患者が霊的に何の感動も覚えなかったら、その治療は失敗したことになります。もしもなんらかの霊的自覚を促すことになったら、その治療は成功したことになります。」

「霊的自覚をもたらすことの方が、病気を治し悩みを解消してあげることより大切です。」

病気を治したいという思いは、人間としてごく当たり前のものです。そこには利己的要素はありません。しかし、そうした人間としての当たり前の願望に対してシルバーバーチは――「病気が治ることより、病気を通じて心が成長することの方が大切である」と言っているのです。それは肉体の病気よりも、心の病気の方が深刻で重大であるということを意味しています。極言すれば、心が成長するなら、肉体の病気は治っても治らなくてもどちらでもいい、ということになります。

このように物質的(肉体的)なものより心の成長を徹底して強調するのが、すべての高級霊に共通した姿勢であり、それこそが“スピリチュアリズム”が最も主張する点なのです。スピリチュアリズムの「霊的教訓」の真髄なのです。

近代心霊研究の究極の目的とは

――「霊魂説」の証明と啓蒙

これまでの内容をもう一度まとめてみると、高級霊がわざわざ手の込んだ心霊現象を引き起こしてきた目的は――地上の人間に「死後の世界があること」「人間は死んでも霊魂として生き続けること」を教えるためでした。すなわち「霊魂説」を証明することが、その目的だったのです。

真摯な態度で心霊研究に取り組んだ科学者は、例外なく霊魂の存在を認めるようになりました。しかしその一方で、せっかくの心霊実験への参加要請を無視し、研究成果に目をつぶり続けた者たちもいました。そうした人間に対してコナン・ドイルは、次のように言っています。

「これほどの心霊研究の報告書を読んで、なお猜疑心が消えないようでは、その人間の頭が少しおかしいのではなかろうか!」

コナン・ドイルは一時期、SPR(英国心霊研究協会)に所属していたことがありましたが、最終的にSPRを脱退しました。それはSPRが、いつまで経っても霊魂の存在を承認する正式な態度を公表しなかったからです。するとこれに同調して八十三名が脱退し、その後、SPRは全く精彩をなくしてしまうことになりました。

伝統宗教に突きつけられる決断

さて「霊魂説」を論じるとき、最も厄介なのがキリスト教に代表される“伝統宗教”です。心霊現象をすべて頭から“悪魔の仕業”だと決めつけ、敵対的態度に出てきます。スピリチュアリズム(近代心霊研究)は、唯物主義という宗教全体の敵に対して決定的な打撃を与えました。本来ならば「唯物主義」こそが、キリスト教にとっての最大の敵であったはずなのです。しかしキリスト教は、一番の味方となるべきスピリチュアリズムを敵視するようになりました。率直に言ってキリスト教会は今後、勇気を持って間違った教義を改めないかぎり、いずれ地上から姿を消すことになってしまうでしょう。

キリスト教会はイエスの死を、大袈裟おおげさに考え過ぎています。確かにイエスの死は感動的ですが、真理のために生命を捧げた人は他にもいます。イエスの真価は、その“気高く美しい人生”にあるのであって“死”にあるのではありません。イエスが死後、弟子たちの前に現れたという現象は、すでに述べたように単なる「幽霊現象」にすぎません。それをもって“将来イエスが復活し再臨して人類を救う”などと考えるとするなら、それは大きな間違いです。

では、仏教はどうでしょうか。キリスト教会のようにスピリチュアリズムに対して露骨な反対に出ないところは仏教のよい点と言えるかもしれません。しかし先に述べたように仏教の教えの中には、明らかに根本的な間違いがあります。

シャカは、明確に「霊魂」という実体を否定し、霊魂があると考えることを“錯覚”としましたが、霊的事実に照らしてみるとそれは完全な間違いです。霊魂は事実存在しますし、人間は死後、霊となって霊界で永遠に生きていくことになります。こうしたスピリチュアリズムの考えを受け入れることは、ある意味で仏教の根幹を揺り動かす事態となります。しかし事実の前には、自らの考え方を訂正していくことしか生き延びる道はありません。その意味で仏教も、やはりキリスト教会と同様、自らを改めていく勇気が問われることになります。

こうした問題は、キリスト教や仏教だけに限ってのことではなく、地球上のすべての宗教に当てはまることなのです。

心霊現象から霊的真理へ

――“スピリチュアリズム”の次なるステップアップ

十九世紀後半から二十世紀初期にかけて、霊界側は目を見張るような心霊現象を次々と演出して、地上の科学者に「霊魂」や「死後の世界」の存在を認めさせることに成功しました。しかし華々しい奇跡的な心霊現象を起こすことが、霊界側の本来の目的ではありません。霊界側は、より高い目的に向けて人類を導くことを計画していたのです。心霊現象の研究(近代心霊研究)は、スピリチュアリズムの計画の中の、初期における一つのステップにすぎませんでした。“スピリチュアリズム”は心霊研究にとどまることなく、さらなる高いレベルに向かって進んでいかなければなりません。

霊界側の目指すより高い目標とは、「霊的真理の普及」です。私たち地上人に霊的世界に関する事実を教え、正しい生き方へと導くことです。「人間はいかに生きるべきか」を地上人に伝え、啓蒙することなのです。そうして地上人の関心を「物から心へ」「目に見える現象から価値観の世界へ」と上昇させることが、次の目的だったのです。

そのために演出される心霊現象は、当然それ以前と比べて一段と高いものが要求されるようになります。ここにおいて、従来の心霊現象とは別の種類の心霊現象が必要となります。その新しい心霊現象が、霊的真理を伝えることを目的とした「霊界通信」なのです。

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