(5)心霊治療(スピリチュアル・ヒーリング)

聖書の中には、イエスが手を触れただけで長患ながわずらいの病人が、たちどころに治ったというような奇跡治療の話が数多く書かれています。科学時代の今日でも、現代医学に見捨てられた人々が「心霊治療(スピリチュアル・ヒーリング)」によって救われたという話を、至る所で耳にすることができます。不治のやまいで苦しむ患者やその家族にとって、奇跡ともいえるような心霊治療は最後の拠りどころと言えます。その意味で心霊治療は、現代人が最も関心を寄せている心霊現象の一つです。

心霊治療(スピリチュアル・ヒーリング)は、それまでの物理的心霊現象に代わって、現代人の知性に合わせた新しい心霊現象として霊界側が演出するものです。事実、第一次世界大戦までは“スピリチュアリズム”の中では物理的心霊現象が中心となっていましたが、大戦を期にスピリチュアリズム本流の心霊現象は、スピリチュアル・ヒーリングに移行していきました。スピリチュアル・ヒーリングは現在、霊界側の全面的援助と協力のもとで世界中に展開するようになっています。

[1]心霊治療の種類とメカニズム

現代医学では手の施しようもなかった病気が「心霊治療」によって奇跡的に好転したり完治するメカニズムとしては、次のような要因が考えられます。

純粋な生体反応

血流やリンパの流れが促されて痛みの原因となる物質が取り除かれたり、脳内麻薬様物質(エンドルフィンなど)がつくられて、痛みが和らげられる。

プラシーボ(暗示)効果

暗示によってプラスの精神状態がつくり出され、それによって自然治癒力・免疫力がアップする。昔からマイナスの精神状態やストレスが人間の健康を害し、反対にプラスの精神状態が健康を回復することが体験的に理解されていた。現代医学では、最近になってやっとその事実に気づき「心身相関医学」という新しい医学が確立されるようになった。)

治療家(ヒーラー)の生体エネルギーの注入

人体には東洋医学で言うような、ある種の生体エネルギー(生体磁気)の流れがあって、全身をコントロールする働きをしている。この流れが滞ると部分的・全体的に不調となる。外部から生体磁気を与えることによって全身の生体エネルギーの流れがスムーズになり、体調が改善されるようになる。鍼灸しんきゅう按摩あんま・マッサージなどによって患者の症状が一時的に快癒するのはこのためである。

治療家(ヒーラー)の霊体エネルギーの注入

人間の霊体からは、古来より“チャクラ”と呼ばれてきた肉体と霊体の接点を通して、肉体に霊体エネルギーが送られている。このとき霊体エネルギーは生体エネルギーに転換して、肉体全体の機能をコントロールするようになる。心霊治療では、治療家(ヒーラー)の霊体エネルギーが患者のチャクラ部分から注入され、それによって患者の肉体のエネルギーレベルが高められ病状が回復するようになる。気功治療や手当て療法などは、こうしたプロセスによって治療が行われる。

霊界の治療者(霊医)からの霊的エネルギーの注入

霊界にいる治療者その多くは地上時代に医者の経験者で、これを「霊医」と呼ぶ)が、地上の治療家(ヒーラー)を媒介にして患者にふさわしい霊的エネルギーを注入して病気を治す。とは言っても、霊界の医者から発せられる霊的エネルギーはあまりにも純度が高いため、そのままでは地上の患者の身体には入っていかない。そのため霊医の霊的エネルギーは、地上のヒーラーの肉体を通過させ物質性を加えてから患者に与えられることになる。

実際の心霊治療(スピリチュアル・ヒーリング)の治療効果は、これらの要因の組み合わせによって引き起こされます。例えば最近注目されている気功治療は、主としての効果によるものです。また、ある新興宗教に入ったら病気が治ったというケースは、の効果によるところが大きいと言えます。さて、この中で純粋な意味で心霊治療と言えるものは、の霊界の医者(霊医)によって行われるヒーリングのことです。霊界の治療者(霊医)が主役になって進められる治療を“スピリチュアリズム”では、本当の意味での心霊治療とし、これを「スピリット・ヒーリング」と呼んでいます。

なおスピリチュアル・ヒーリングについては、『スピリチュアル・ヒーリングとホリスティック医学』(日本スピリチュアル・ヒーラーグループ発行)の中で詳しく述べられていますので、関心のある方はそれをご覧ください。

[2]代表的な心霊治療家(スピリチュアル・ヒーラー)

スピリチュアリズムの歴史の中では、多くの優れた「心霊治療家(スピリチュアル・ヒーラー)」が誕生しました。そうした優れたヒーラーたちによって、スピリチュアリズム運動は知名度を高め、さらなる発展がもたらされることになりました。ここでは代表的な心霊治療家について見ていきます。

チャップマンの霊体手術

ラングという霊界の治療者(霊医)が、イギリス人心霊治療家「チャップマン」の肉体を一時的に支配し患者を治療します。チャップマンはトランス状態に入っているので、その間の出来事は覚えていません。その治療方法は、主に患者の幽質結合体に対しての直接的な心霊手術です。幽質結合体とは、地上人が地上生活を送る間にだけ存在する霊体と肉体の中間体であり、肉体と同じ形をしています。肉体の一部に異常があると、幽質結合体の同じ部位にも異常が生じるようになります。霊医がこの異常部分を取り除くと、肉体の異常が治るようになります。チャップマンの治療では、患者の治癒力が低下しているときには、まず初めに霊的エネルギーを患者に注入することを行っています。

チャップマンはこうした直接的な心霊治療以外にも、チャップマンの依頼に応じてラング霊が患者のもとに赴き治療するという形式の治療も行っています。これは「遠隔治療(アブセント・ヒーリング)」の特殊なケースです。

トニーの心霊外科手術

フィリピン人「トニー」の心霊手術は、チャップマンの幽質体への手術と違って、患者の肉体の患部を直接取り出すというものです。手術はトニーが手刀てがたなで肉体をなぞると、まるでナイフかメスで切ったかのように肉体が開きます。そしてトニーはその切り口から素手を体内に突っ込んで患部を取り出します。患部を取り出した後、彼が手でなぞると切り口はきれいにふさがり跡形もなくなります。手術の最中、患者はほとんど痛みを感じることはありません。

一時期、日本からも多くの患者がトニーのもとに押しかけたことがありました。それほど際立った治療能力の持ち主であったトニーも煩悩の誘惑に負け、生活を乱して能力を失ってしまったことがありました。そのとき人間の腫瘍の代わりにブタの肉片を用いたトリックが発覚し、著しく評判を落とすことになりました。その後、彼は改心し、神の道具として誠実な治療師の道を歩み直すようになると、かつての治療能力が戻りました。心霊現象や心霊治療には、絶えずこうした不正が付きまといます。ニセ治療師は金儲けと名声のために、しばしば心霊治療を悪用します。トニーもこうした悪徳ヒーラーの中に足を踏み入れかけましたが、すんでのところで思いとどまることができたのです。

トニーと同じように直接的に肉体患部を取り除く心霊治療家がブラジルにもいました。またタイをはじめとする東南アジア各地にも存在します。タイ東北部ラオスに近い地区に住む中年女性の心霊治療師は、トランス状態になると地上時代ラオス人だった霊界の治療者が乗り移ります。そして女性の口を使って患者の患部にかぶりつき、それを取り出します。患部と思われるものが取り除かれると病気はよくなっていきます。この様子は十数年前、テレビで放映され大きな反響を呼びました。東南アジアにはこうした心霊治療師が、まだまだ多くいるものと思われます。「なぜこの女性を霊媒として選んだのか?」という質問に対して霊は、「この女性は身体が健康で利己心が少ない。人と争うことがないから」という印象的な答えをしていました。

ハリー・エドワーズの心霊治療

イエスが地上時代に行った以上の病気治療をしたと絶賛され、スピリチュアリズムの歴史上最も有名な心霊治療家が、イギリス人「ハリー・エドワーズ」です。彼の治療では、医学で“不治”と宣告された患者の八十パーセントに何らかの好転が見られ、そのうち三十パーセントの人が完治しています。心霊治療を依頼した患者の多くが現代医学に見放されていたことを考えると、ハリー・エドワーズの治療実績は驚異的と言えます。

ハリー・エドワーズの心霊治療では、霊界の治療者(霊医)が、彼の身体を媒介として患者に霊的エネルギー・治療光線を注入します。ハリー・エドワーズの治療の様子ははたから見るかぎり、ただ単に手を軽く患者の身体の一部に触れるという、実に地味で何の変哲もないものです。しかしそうした地味な行為の中で、霊界サイドでは驚異的な心霊治療が進められていたのです。

ハリー・エドワーズの心霊治療は、まさに「スピリット・ヒーリング」の見本と言えます。彼の治療は、常に霊界の医者たちによって主導されていました。彼の背後には多数の霊医からなる医師団が控えその中心者が、パスツール霊でした)、そこでは絶えず地上の研究所のように治療光線の研究がなされていました。こうして霊界の実験室でつくられた治療光線が、ハリー・エドワーズという地上の治療家を通して患者に与えられたのです。

スピリット・ヒーリングにおいては、地上のヒーラーは、霊医の治療エネルギーの変圧器(トランスフォーマー)の役割を果たすことになります。ヒーラーが霊的エネルギーの良き媒介体・霊医の道具となることで、治療効果はいっそう高まることになります。ハリー・エドワーズは、常に「良き霊界の道具」を目指して生活を正し、自分の心を清め高めるように努力していました。彼には“自分が患者の病気を治してやるのだ”というような思い上がりや気負いは一切ありませんでした。霊界の道具に徹しようとする彼の謙虚さの中に、スピリチュアル・ヒーラーとしての模範的人格を見ることができます。

彼と同じような形式で治療を行う心霊治療家は、今日、世界各地に数多くいますが、その治療効果は次の二つの内容(条件)によって決定されます。治療効果を決定する一つ目の条件とは、トランスフォーマー役を務める治療家自身の霊的レベル(霊性)と精神状態です。治療家の内面性(霊性・精神性)によって、霊医から受けられる霊的エネルギーの質が決定されます。もう一つの条件は、治療を受ける側(患者)の霊的成長レベルと精神状態です。これによって患者自身がヒーラーから受け取ることのできるエネルギーの内容が決められます。

スピリット・ヒーリングは「霊的法則」に基づいて進められます。常に厳密な法則の支配のもとで進行します。患者の「霊的成長レベル」によって治療が制約されるということです。それは患者の魂が、霊医から送られてくる治療エネルギーを受け取ることのできるレベルにまで成長していないかぎり、どれほど優れた治療家(スピリチュアル・ヒーラー)から治療を受けても病気は治らないということを意味します。これがスピリット・ヒーリングにおける大原則なのです。

カール・ウィックランドの除霊治療

米国の精神科医師「カール・ウィックランド」は、スピリチュアリズムに関心があり、自分で交霊会を催していました。あるとき霊界側から一つの提案がなされました。それは、「ウィックランドが扱っている精神病患者の大半が低級霊による“憑依ひょうい”が原因となっているので、その憑依霊を患者から引き離して妻アンナに乗り移らせ、しゃべらせる。その憑依霊に博士が応対して実情を聞き出し、目覚めさせてやって欲しい」というものでした。霊界側は、アンナの身の安全は保証すると言い、全面的な協力を約束しました。そうして始めた「除霊治療」は実に三十年にわたって続けられ、おびただしい数の精神病患者が癒やされ正常になりました。それと同時に、患者に憑依していた霊たちも救われることになりました。

日本の新興宗教の中には、これと似たような除霊治療を行っているところがあります。患者に対して手をかざしたりオーラを放射すると、憑依していた霊が苦しみながら出てきます。この霊を説得したり、他の霊に連れていってもらったり、時にはさらにオーラを放射して追い出すなどして、患者から引き離すことが行われています。しかし現実の様子を見るかぎり、そうした方法では、さほどよい結果は得られません。その時だけは霊が離れて病気がよくなっても、しばらくするとまた同じ霊に取り憑かれたり、別の霊に憑依されるといったことを繰り返すようになるのです。

それに対しウィックランドの除霊治療は、霊界側の全面的な協力と援助のもとで行われたため、見事な結果を残しています。

エドガー・ケイシーのリーディング治療(霊界からのアドバイス治療)

二十世紀のアメリカ人霊媒として、「エドガー・ケイシー」は最も広く知れわたった人物でした。一九四五年に亡くなるまで、何百万人もの患者が彼の診断を求めてやってきました。彼が横になってトランス状態に入ると、彼の意識を支配した霊が患者の体を透視して診断と処方について語り出します。この霊界からの助言によって、多くの患者の病気が治癒しました。ケイシーのリーディング治療の治癒率は、きわめて高かったのです。

こうした霊界からの治療や処方に関するアドバイスは、膨大な数に及んでいます。現在もケイシーの後継者たちが、その処方箋に従って患者の治療にあたっています。しかし、ケイシーの存命中のようなよい治療成果をあげることはできていません。その理由として、現代の物質文明の発展や生活スタイルの変化にともない、ケイシーの時代と比べて人々の体質が著しく劣化していることが考えられます。そのため当時の処方箋は、そのままでは現代人には適用できなくなっているのです。さらに重大な理由があります。それはスピリチュアル・ヒーリングでは、常に一人ひとりの体質やカルマや症状に合わせたオーダーメードの処方がなされるということです。時代を経た昔の処方箋は、このスピリチュアル・ヒーリングの大原則に一致しません。

したがって当時、ケイシーの前に現れた患者には有効だった処方も、今日の人間には効果を発揮することはできないということなのです。この意味でケイシーが残した膨大な霊界アドバイス(処方箋)は、すでに時代遅れになっているのです。

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