(1)霊主肉従の努力(霊優位のための自己コントロール)

「霊主肉従」と「肉主霊従」

私たちの心は、霊本来の意識(霊的意識)と、肉体に由来する本能的意識の二つから成り立っています。地上においては、この霊的意識と本能的意識を“心の内容”として認識しています。ところがこれら二つの意識の方向性は相反しているため、心の中で絶えず霊と肉とが葛藤するようになります。

地上という物質世界にいるかぎり、本能的意識(肉体的意識)が力を持ち、簡単に霊的意識を閉じ込めてしまいます。その結果、本能的意識が心の中心を占めるようになり、心全体が“利己性”を帯びるようになります。こうした心の状態を「肉主霊従」と言います。それとは反対の状態、すなわち霊的意識が本能的意識を抑え、心全体を支配するようになることを「霊主肉従」と言います。「霊主肉従」は、心が霊優位になった状態のことです。地上人の心は、「霊主肉従」か「肉主霊従」のいずれかの状態にあります。また一日のうちでも、この二つの状態の間を揺れ動いています。

地上人は、大きく「霊主肉従」をベースにしている人間と、「肉主霊従」をベースにしている人間の二つに分けることができます。肉体を持っているため、一日中すべての時間を完全な霊主肉従の状態で過ごせる人はいません。誰でも霊主肉従の清らかな時間と、本能的意識(物質的意識)に支配された時間をともに持っていますが、全体として見たとき「霊主肉従」の方が多い場合には「霊優位の人生を送っている」と言えます。

現在の地球上では、霊優位の人生を送っている人はごくわずかです。大半の人間が、物質的欲望にどっぷり浸かった生き方をしています。日常のほとんどの時間が「肉主霊従」となっています。

霊主肉従は、霊的成長のための第一条件

霊的成長をなすためには、心を「霊主肉従(霊優位)」の状態にすることが大前提となります。霊が肉体(物質)に抑え込まれ身動きできない状態では、とうてい霊的成長をなすことはできません。

「霊主肉従」の状態は、霊的エネルギーが取り入れられて霊的意識が大きくなったときに可能となります。心が「霊主肉従」になると、肉欲が消え去り、エゴ的思いがなくなります。そして周りの人々に対して愛の思いが自然と湧くようになります。また心の底から澄み切ったすがすがしさや心地よさを実感するようになります。深い祈りなどによって霊的エネルギーが多量に取り入れられると、心がすっきりして明るくなるのはそのためです。自分の心から利己性が消え去り、周りの人々に対する愛の思いが深くなり、自分自身の心の純粋さに驚くようになります。

それとは反対に「肉主霊従」の状態に陥ると、肉欲の思いが強くなり、重苦しさ・暗さ・寂しさ・虚しさ・孤独感が心を占めるようになります。そして周りの人々に対して批判的な思いが湧くようになります。それは霊的エネルギーが枯渇しているために引き起こされる現象です。現代人の多くが「肉主霊従」の中で寂しさ・虚しさを克服することができず、重苦しい心を持ったまま時を過ごしています。そして寂しさ・虚しさから逃れるために退廃的な娯楽に興じたり、酒やセックスやドラッグにおぼれています。

宗教の修行の究極の目的は「霊主肉従」

宗教には、さまざまな戒律や修行法があります。現代人の多くは、こうした戒律や修行を時代遅れのもの・意味のないものとして片付けようとします。しかし霊的真理に照らしてみると、戒律や修行にはそれなりの意味があることが分かります。従来の宗教における戒律や修行は、「霊主肉従」の状態をつくり上げるための手段であったのです。

戒律や修行は、物欲・肉欲にとらわれがちな地上人の心に足枷あしかせをはめ、放縦に流されないようにするための霊的手段です。物欲にまみれた日常意識を断ち切って、より次元の高い心境を持つためには戒律や修行が重要な働きをします。地上の宗教にはいろいろな種類の修行法がありますが、それらの本来の目的は、地上人の心を霊主肉従の状態に導くことにあったのです。すべての修行法の目的は、「霊主肉従をもたらす」という一点に集約されます。

「霊主肉従」のための具体的な実践内容

霊主肉従のための努力とは、物欲・肉欲に流されないストイックな歩みを心がけることに他なりません。スピリチュアリズムの“霊的人生”とは、健全な禁欲的生活を送ることなのです。

では、スピリチュアリズムでは「霊主肉従」のために、具体的にどのような方法を勧めているのでしょうか。私たちは霊優位の状態を保つために、どのような努力をしたらよいのでしょうか。それを整理すると次のようになります。

肉の放縦にストップをかけるための努力(本能に対して足枷をはめる)
物質(衣食住)を必要以上に求めたり執着しない。何とか生活できるレベルで良しとし満足する
飽食・過度の飲酒を慎む
セックスの放縦に流されない
霊体と肉体のバランスをとるための努力
適度な全身運動をする
汗をかくような全身運動・ヨーガ・呼吸法などは、霊体と肉体のバランスを正常化するのにきわめて有効です。
入浴・水浴などを上手に利用する
霊的エネルギーを取り入れるための努力
霊的真理をじっくり読む
瞑想・祈りをする
霊的心境の高い人と会って話をする
心を高めるような良い音楽を聴く

以上が、霊主肉従のための具体的な実践内容です。ここではと、霊優位のレベルが高くなっていきます。これらを実行するためには、強い決意と忍耐が必要とされます。それなくしては霊主肉従は成功しません。霊的成長の大前提となる「霊主肉従」は、絶え間のない厳しい内面の闘いから達成されるようになるのです。

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