(2)地上の愛のゆくえ

――霊界での「男女愛」と「家族愛」

霊界での男女の再会と別離

地上で愛し合った男女が他界した場合、もし魂の成長レベルが同じであれば、同じ界層で再び愛し合うようになる可能性があります。その場合、二人の結びつきは地上時代よりも、いっそう強くなります。しかしその後、両者の霊的成長のスピードが異なれば、やがて一方が先に上昇の道を歩み出し、それにともない二人は別々の界層で生活するようになります。

とは言っても、両者の間に本当の愛があれば、上の界層へ行った者が一時的に下に降りて会いに行くこともできます。真の霊的絆があるなら、愛の関係が失われることはありません。「霊的愛」という真実の愛は、界層の違いを超えて二人を結び続けるのです。

霊界では存続できない地上の男女愛(性愛)

男女愛について論じる際に重要な点は、地上の男女愛と霊界のものでは、その内容が全く異なるということです。地上では子孫を残すために男女の肉体的交わりがありますが、霊界ではそうした子供をつくるためのセックスは必要ありません。そのため霊界では、地上のような性愛は存在しなくなるのです。

地上における男女愛(性愛)は肉体本能から発生しているため、往々にして“利己的要素”がともなっています。しかし肉体の存在しない霊界では、男女愛の中にそうした要素は一切含まれません。もし男女愛が、地上時代の肉体本能を土台とした男女関係の延長であるなら、地上でいかに愛し合った男女であっても霊界では一緒に生活することはできません。霊界全体を支配している摂理によって、そのようになるのです。地上の男女愛(性愛)は、激しくなればなるほど“利己性”が強くなります。この男女愛(性愛)の激しさが、しばしば文学のテーマになったり、多くの純粋な男女の憧れにもなってきましたが、そうした愛は霊界では通用しません。地上で一般的に見られる男女愛は「霊的法則」から外れているため、永遠性を持つことができないのです。

地上時代の男女の結婚が、肉体の結びつきだけで霊的な結びつき(霊的愛・純粋な利他愛)がない場合、死とともに二人は離ればなれになり、二度と会うことはなくなります。

霊界における男女関係

――霊的な男女愛とは?

利己性のともなった愛は霊界では全く通用しないため、地上の大半の男女愛は存在しなくなります。霊界と地上界との際立った違いの一つが、この男女愛です。霊界通信では、絶えず「地上には本当の男女愛はない」と言っています。

では、本当の男女愛とはどのようなものなのでしょうか。霊界の男女の関係とはどのようなものなのでしょうか。結論を言えば――「霊界における男女愛とは、地上の親友同士の友情関係に近いもの」ということになります。魂と魂の関係、利他愛と利他愛の結びつきが、どこまでもその中心となります。相手の霊的成長を最優先して願う愛が、霊界での男女愛です。地上のような独占的愛(利己的愛)が一切含まれない純粋な霊的愛が、霊界における男女愛なのです。

霊界での男女愛には、地上のように“相手を自分に惹き付けておきたい”といった思いは全くともないません。常に相手の霊的成長に関心が向けられます。そしてそれを成し遂げる本物の「霊的愛(利他的愛・普遍的愛・神への愛)」を求めるのです。霊界では成長するにつれて、地上のような男女差はなくなっていきます。それと同時に、真実の神の愛によって結ばれた両者は、地上では想像もつかなかったような愛の喜びを体験することになります。これが霊界での結婚、魂と魂の融合化です。

地上の家族愛と、霊界での離散

男女愛と同様、地上における「家族愛」は往々にして排他性と利己性をおびています。常に自分たちの家族の利益を第一に求めます。親は自分の子供の幸せだけを願い、自分の子供の利益を優先して求めます。“我が子だけが大切”というのが、地上の大半の親子愛の実態です。地上の家族の結びつきは、いわゆる血のつながり(血縁)であって、どこまでも物質的つながり・物質的関係にすぎません。それは肉体本能による結びつきであって、霊的なものではありません。そのため大半の地上の家族関係は、霊界においては失われることになります。

地上の家族関係の中には、人間として体験すべきあらゆる種類の愛が存在します。親子愛・兄弟愛・夫婦愛という、それぞれ異なった次元の愛を体験することで“人類愛”のリハーサルが可能となります。また他人に愛を与え、他人の愛を受け入れるという愛の基本的訓練が、家族関係の中でなされるようになっています。

しかし、その家族の内容が本能的で利己的なものであるとするなら、せっかくの家族関係は、霊的成長にとって何の役にも立たないことになってしまいます。そうした家族は死後、お互いが幽界で一時的に会うことはあっても、霊界に入るともはや一緒に歩むことはできなくなります。各自がそれぞれ霊的に成長し、霊的愛・利他的愛・普遍的愛を持てるようになったときのみ、霊界での再会が実現することになりますが、現実には死とともに大半の家族はバラバラになってしまいます。

地上で血縁的関係を重視し、それに縛られた生活を送れば送るほど、霊的な家族の絆は薄くなります。地上世界における利己的愛・自己中心的意識は、霊界では必ず拭い去らなくてはならない時を迎えるようになります。この意味で地上における血縁信仰や家信仰には、大いに問題があります。地上では、とかく血筋・血縁を重視する傾向が強いのですが、それは霊界では全く通用しません。霊界では、地上のような親子関係も家族関係も血縁関係も一切存在しません。霊界では「霊的愛・利他的愛」のみが、唯一の人間関係をつくる絆となるのです。

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