14章 霊界通信の難しさ

〔シルバーバーチの交霊会にたびたび出席しているメンバーは、霊界通信の問題点を知っているが、彼らは霊界側があらゆる障壁を打ち破って地上にメッセージを送ってきたという事実にしばしば驚かされる。シルバーバーチは霊媒をコントロールするシステムを見事に進化させてきたために、霊媒を通して彼の思想のすべてを地上に伝えることができると述べている。とは言うもののシルバーバーチは、時に霊媒の潜在意識が通信の妨げになることも認めている。この章では、霊界通信に関するさまざまな問題を取り上げている。〕

あなた方の住む物質界は活気がなく、どんよりとしています。あまりに重苦しくてうっとうしいために、私たちがそれに合わせようとバイブレーションを下げていくうちに高級界との連絡が途切れてしまうことがあります。私の住む光の世界とは対照的に、あなた方の世界は暗くて、冷たくて、じとじとした世界です。

あなた方は、目もくらまんばかりに神々しく光り輝く霊界の太陽を、まだご覧になったことがありません。あなた方はその色あせた模造を見ているにすぎません。ちょうど月が太陽の光を反射して輝いているように、あなた方の目に映っている太陽は、私たちの太陽のかすかな反射程度にすぎないのです。

こうして地上に降りてきた私は、カゴに入れられた小鳥のようなものです。用事を済ませて地上から去っていくときの私は、鳥カゴから放たれた小鳥のように、果てしない宇宙の彼方かなたへ喜び勇んで飛び去っていきます。あなた方の言う“死”とは、鳥カゴという牢獄から解放されることなのです。

あなた方から「知り合いの霊からのメッセージを教えてほしい」と頼まれたときには、私はその霊のレベルに合わせたバイブレーションに切り換えます。そのときの私は、単なるマウスピースにすぎません。状態がよいときは簡単に霊からのメッセージをキャッチできます。しかし、この交霊会が開かれている部屋の近所で何か事が起きると混乱が生じます。突然、通信ルートが途絶えてしまうことがあります。そうしたとき私は、急いで別の通信ルートに切り換えなければなりません。バイブレーションを新しいものに切り換えるということです。

個人的なメッセージを伝えるとき、相手の霊が言っていることが手に取るように聞こえることがあります。それはこうして私が今この霊媒を使って語っているときのように、同じレベルのバイブレーションで通じ合っていることを意味します。

しかし、これが高級界からの啓示を受け取るとなると、そう簡単にはいきません。私は別の意識に切り換えなくてはならないため、同じバイブレーションを使うわけにはいきません。シンボルとか映像、ビジョン、直観といった形で印象を受け取り、それを言語で表現することになります。それは地上の霊能者が啓示に接するのと非常によく似ています。そのときの私は、普段シルバーバーチとして親しんでくださっている意識よりも、一段と高い次元の意識を表現しています。

画家がインスピレーションを受けるときは、いつも使用しているものとは異なるバイブレーションに反応しています。その状態の中で画家は霊力の受け手となり、それを映像に転換してキャンバスの上に描きます。インスピレーションが去ると、それができなくなります。

これと同じで、私が皆さんに霊的真理を伝えようとするときは、高度なバイブレーションに反応できる意識の回路を開き、霊界からのメッセージを表現しなければなりません。そうすることで高級霊は、私を道具として用いることができるのです。

その際、私はこの霊媒の語彙ごい(記憶している言葉)の制約を受けるだけでなく、霊媒の魂の進化の程度による制約も受けます。霊媒が霊的に成長すればその分だけ、それまで表現できなかったことが表現できるようになるのです。

今ではこの霊媒の脳のどこにどんな単語があるのかが分かっていますから、それらを何とか駆使して、私の思ったことやここへ来るまでに用意した思想を百パーセント表現することができます。

この霊媒を通じて語り始めた頃は、霊媒の脳の中にある一つの単語を使おうとすると、それとつながった不要な単語まで出てきて困りました。神経、特に脳の中枢全体をコントロールするすべを身につけなければなりませんでした。それによって必要な単語だけを用いることができるようになりました。現在でも霊媒の影響をまったく受けていないとは言えません。時々、霊媒の言葉が私のメッセージをわずかに着色することがあります。しかし、私の言おうとする内容が変えられることはありません。

あなた方西洋人の精神構造は、私たちとはかなり違います。私たちインディアンの霊が(西洋人の)霊媒をうまく使いこなせるようになるには、相当の年数を要します。霊媒的素質を持った者の睡眠中に、その霊的身体を使って実験を繰り返します。そうした訓練の末に、ようやくこうして霊媒を入神させてその口を使って語ることができるようになるのです。

他人の身体を使ってみると、人間の身体がいかに複雑にできているかがよく分かります。霊媒の心臓をいつものように鼓動させ、血液を循環させ、肺を伸縮させ、適度な刺激によって脳の機能を正常に保つ一方で、彼の潜在意識の流れを止めて、その間に私たちの考えを送り込みます。それは容易なことではありません。

初めのうちは、そうした操作を意識的にやらなければなりません。それが上達の常道というものです。赤ん坊が歩けるようになるには、最初は一歩一歩、足を運ぶことをマスターしなければなりません。そのうち意識しなくても自然に足が出るようになります。私がこの霊媒をコントロールできるようになるまでには、やはり同じような経過をたどりました。しかし、今では自動的にできるようになっています。

他界したばかりの霊が霊媒を通してしゃべるときは、そこまでする必要はありません。霊媒の潜在意識に霊の思念を印象づけるだけでよいのです。それでもかなりの練習が要ります。その練習をこちらの世界の者同士で行いますが、それほど簡単なものではありません。こうして霊媒の口を使って語るよりは、メガホンを使ってしゃべる方がずっと楽です。

訳注――物理的心霊実験で、霊界の技術者がメガホンの中にエクトプラズムで発声器官をつくり、通信霊がそれを口にあててしゃべる。この種の心霊現象は、初期のスピリチュアリズムにおいて盛んに演出された。

人間の潜在意識には、それまでの長年の生活によって決まったパターンが形成されています。考え方や表現方法や用いる概念に、一定の傾向ができ上がっています。その潜在意識を使ってこちらの思想やアイデアや単語を伝えるためには、潜在意識の流れ(回路)をいったん止めて、新しい回路をつくらなくてはなりません。もしも同じような考えが潜在意識にあれば、その回路に切り換えます。それはレコードプレーヤーのようなものです。レコード板のトラック(溝)の上に針を置けば、自動的に曲が出てくるのと同じです。

私がこの部屋に入ってくるのに壁は障害にはなりません。私のバイブレーションにとって壁は硬い物質ではないのです。むしろ霊媒のオーラの方が硬い壁のように感じられます。霊媒のオーラが私のバイブレーションに影響を及ぼすからです。霊媒のオーラは私にとっては牢獄のようなもので、私は霊媒の肉体によって制約を受けます。そのため私はバイブレーションを下げ、霊媒の方はバイブレーションを高めなければなりません。それがうまくいくようになるのに十五年もかかりました。

霊媒のオーラの中にいる間は暗くて何も見えません。霊媒の肉体によって私の能力は制約を受けます。この霊媒は、子供のときから霊媒として必要なすべてのことを身につけなければなりませんでした。そして私は、この霊媒をどのように使用するかを学ばなければなりませんでした。もっとも、足の使い方は知る必要がありませんでした。私には足は用がないからです。必要なのは脳と手だけです。

この霊媒を支配しているときに別の霊からのメッセージが届き、それをそのまま伝えることがありますが、その際は霊媒の耳を使うのではなく私自身の霊耳れいじを使います。これも霊媒のオーラと私のオーラの問題です。私のオーラは霊媒のオーラほど鈍重ではなく、霊媒のオーラの中にいるときでも、他の霊が私のオーラに思念を印象づけることができるのです。

それは譬えてみるなら、皆さんが誰かと電話で話をしながら、同じ部屋にいる別の人の話を聞くのと同じことです。それは二つの異なるバイブレーションを利用しているわけです。二つの行為を同時にすることはできませんが、バイブレーションを切り換えることはできます。

質疑応答

――霊言現象は、霊が霊媒の身体の中に入ってしゃべるのですか。

必ずしもそうではありません。大抵の場合、霊媒のオーラを通じて操作します。

――霊は、霊媒の発声器官を使いますか。

使うこともあります。現に私は今、この霊媒の発声器官を使っています。もし私がそうしようと思えば(エクトプラズムで)私自身の発声器官をつくることも可能ですが、エネルギーの無駄づかいになります。私の場合はこの霊媒の潜在意識を完全に支配していますから、霊媒のすべての肉体器官をコントロールすることができます。言わば霊媒の意志まで私が代行し――本人の同意を得ての話ですが――その間だけ身体を預かるわけです。通信が終わると私はオーラから退き、霊媒は意識が戻って、いつもの状態になります。

――霊媒の霊的身体を使うこともありますか。

ありますが、その霊的身体は常に肉体とつながっています。

――交霊会を邪魔しようとする低級霊集団を排除するためには、参加者にも心の準備が要りますか。

当然、要ります。何よりも大切なことは、あなた方の心と魂を「愛」で満たすことです。そうすれば同じように愛にあふれた霊以外は近づきません。

――交霊会を開くときには、霊界側でもそのための配慮をするのですか。

もちろんです。常に妨げるものがない状態にしておかなければなりません。あなた方との調和もはからなければなりません。最高の成果をあげるためには、あらゆる要素を考慮しなければならないのです。その目的のために私たちは、高度に組織された体制で臨んでいます。

――霊媒は本をよく読んで勉強し、少しでも多くの知識を得た方がよいでしょうか。それとも自分の霊媒能力に自信を持って、それ一つで勝負した方がよいでしょうか。

心霊能力の種類にもよるでしょうが、霊媒は何も知らない方がいいという意見には賛成できません。知識は、ないよりはあった方がいいと思います。知識というのは先人たちの経験の蓄積ですから、勉強してそれを身につけるように努力するのが賢明でしょう。私はそう考えます。

――立派な霊能者になるためには、霊的な生活を送る必要がありますか。

あなたがより良い生活を送れば、それだけ大霊の道具として立派になります。生活態度が高尚であればあるほど、それだけ内部に宿された神性が多く発揮されることになります。日常生活で発揮されているあなた自身の霊性が、あなたをより優れた道具にしていくのです。

――ということは、霊的に向上すればするほど霊能者としても向上すると言ってよいでしょうか。

その通りです。生活面が立派であればあるほど、霊能力も立派になります。自分を犠牲にする覚悟のできていない人間は、価値ある仕事を達成することはできません。これは、こうして霊界での生活を犠牲にして地上へ戻ってきた私たちが身をもって学んできた教訓そのものなのです。

――他界した霊からの援助を受けるにはどうすればよいでしょうか。

かつてあなたが愛し、またあなたを愛してくれた人々は、決してあなたを見捨てるようなことはありません。あなたは常に彼らの愛に包まれています。彼らにはあなたに対する愛があるため、あなたのそばを離れることはありません。

時に彼らは、誰よりも身近にいることがあります。彼らは、あなたに対して、自分たちの影響力を及ぼすこともできるのです。あなたは、そうした霊界からの働きかけを受け入れやすいときもあれば、恐怖感・悩み・心配等の念に心がとらわれて壁をつくり、彼らが近づくことを困難にするときもあります。悲しみの涙に暮れていると、その涙であなたを愛する霊たちを遠くへ押しやってしまいます。穏やかな心・安らかな気持ち・希望と信念と自信に満ちた明るい雰囲気に包まれているときには、大勢の霊が寄ってくることを実感するようになります。

私たち霊界の者は、地上の人間との接触を求めて近づこうとするのですが、どの程度まで接近できるかは、その人の雰囲気、人間的成長の度合、霊的進化の程度によります。霊的なものに一切反応しない人間とは、接触できません。霊的自覚・悟り、ないしは霊的活気のある人間とはすぐに接触が可能となり、一体関係をつくることができます。

それは必ずしもスピリチュアリストとは限りません。知識としてスピリチュアリズムのことは知らなくても、霊的なことが理解できればそれでよいのです。とにかく冷静で受容的な心を保つことです。そうすれば私たち霊界の者は、あなた方に近づくことができるのです。恐れや悩みや心配の念を心に宿してはいけません。それらは心にモヤを生み出し、私たちが近づくことを困難にしてしまいます。

――愛していた人間が他界した場合、こちらから送った愛念はその霊に通じますか。

一概に「イエス」とも「ノー」とも言いかねます。魂の進化のレベルが問題となるからです。双方が精神的ならびに霊的に同じレベルであるならば通じるでしょう。が、あまりにも離れ過ぎていれば、地上からの思いは通じないことになります。

――他界した人のことをあまり心配すると、彼らの向上の妨げになるのでしょうか。

地上の人間に霊界の人間の進歩を妨げる力はありません。霊界の人間は霊界での行為によって進歩するのであって、地上の人間の行為とは関係ありません。

訳注――例によってシルバーバーチは大所高所から、つまり永遠の生命の観点から述べている。が、実際には病的なほど死者を嘆き悲しむ人間がいるのも事実で、その念が死者をいつまでも地上圏に引き留めている例は少なくない。

――どうすれば霊媒や霊視能力者になれるのでしょうか。

大霊のために自分を役立てようとする人間は皆、大霊の霊媒です。いかにして魂を向上させるか――これはもう改めて説くまでもないでしょう。これまで何回となく繰り返し説いてきたことではないでしょうか。

自分を愛するように隣人を愛することです。人のために役立つことをすることです。自我を高めるように努力することです。何でもよろしい、内部に宿る神性を発揮させることです。それが最高の霊媒現象なのです。こうすれば霊視能力者になれるという方法はありません。が、大霊の光が見えるように魂の目を開く方法なら教えられます。それは今述べた通りです。

――世俗から隔絶した場所で瞑想の生活を送っている人がいますが、あれでよいのでしょうか。

「よい」という言葉の意味しだいです。世俗から離れた生活は心霊能力の開発には好都合で、その意味ではよいことと言えるでしょう。が、私の考えでは、世俗の中で生活しつつしかも世俗から超然とした生き方をする方がはるかに上です。つまり努力と忍耐と向上を通して自己を確立したのちに、大霊から授かった霊力を同胞のために役立てるのが、より良い生き方なのです。

――世俗から離れた生活は自分のためでしかないということでしょうか。

いちばん大切なことは、他人のためにおのれを捨てるということです。自分の能力を発達させようとすること自体は間違ってはいませんが、開発した才能を他人のために活用するのは、はるかに大切なことです。

――これからホームサークルをつくりたいと思っている人たちへのアドバイスをいただけますか。

ホームサークルをつくってそこに霊力を顕現させるためには、たいへんな忍耐と交霊会を継続していくための準備が必要となります。

イヤな思いをすることのない、本当に心が通い合う人々が同じ目的を持って一つのグループをつくります。そして週に一回、同じ時刻に集まり、一時間ばかり、あるいはもう少し長くてもよいのですが、祈りから始めて受動的な状態をつくります。各自が前もって、本当に自分たちは目的を達成したいと願っているか、心の内を厳しく見つめ、動機や意欲を問いたださなければなりません。

人のために役立ちたいとの動機から出発しているなら、粘り強くホームサークルを続けていくことです。もし動機が面白半分から出ているとすれば、良い結果は得られません。サークルのメンバーが一つの場所に集い、心を一つにし、霊力を顕現させようと願っているなら、そのとき霊力との触れ合いが始まり、徐々にそれが顕現するようになっていきます。

私たちの目的は、人目を引くことばかりしたがる見栄っ張りを喜ばせることではありません。人類の霊性を引き上げ、使わずに忘れ去られてきた大霊から授かった霊力をもう一度、見いださせてあげることなのです。

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