3章 創造

〈天体の形成〉

――物的宇宙は創造の産物でしょうか、それとも神と同じく永遠の過去から存在し続けているのでしょうか。

「もちろん宇宙がみずからをこしらえるはずはありません。もしも神と同じく永遠の過去からの存在であるとしたら、それは神のわざではないことになります」

――どのようにして創造されたのでしょうか。

「有名な表現を借りれば“神のご意思によって”です。神が“光よあれ”と言われた。すると光が生まれた。この“創世記”の言葉以外に、全能の神のあの雄大な働きをうまく表現したものはありません」

――天体が形成されていく過程を教えていただけませんか。

「人間の理解力の範囲内でこの命題に答えるとすれば、空間にまき散らされた物質が凝縮して天体となった、と表現するしかありません」

――彗星は、天文学で推測されている通り、その物質の凝縮の始まり、つまり形成途上の天体なのでしょうか。

「その通りです。ただし、彗星にまつわる不吉な影響を信じるのは愚かです。すべての天体には、ある種の現象の発生にそれぞれの役割分担があります」

――完成された天体が消滅し、宇宙のチリとなって再び天体として形成されるということはありませんか。

「あります。神は、天体上の生き物を新しくつくり変えるように、天体そのものも新しくつくり変えます」

――天体、たとえばこの地球が形成されるのに要した時間は分かるでしょうか。

「それは我々にも分かりません。創造主のみの知るところです。いかにも知っているかのごとき態度で長々と数字を並べたりするのは愚か者のすることです」

〈生命体の発生〉

――地球上の生物はいつ頃から生息するようになったのでしょうか。

天地初発あめつちはじめの時は全てが混乱の状態で、あらゆる原素が秩序もなく混じり合っていました。それが次第に落ちつくべき状態に落ちつき、その後、地球の発達段階に応じて、それに適合した生物が出現して行きました」

――その最初の生物はどこから来たのでしょうか。

「どこからというのではなく、地球そのものに“胚”の状態で含まれていて、発生に都合のよい時期の到来を待っておりました。地球の初期の活動がようやく休止すると、有機的原素が結合して地上に生息するあらゆる生物の胚を形成しました。そして各々の種に生気を賦与する適切な時期の到来まで、その胚はさなぎや種子と同じように、不活性の状態で潜伏していました。やがてその時期が到来して発生し、繁殖して行きました」

――その有機的原素は地球が形成される以前はどこに存在していたのでしょうか。

「言うなれば流動体的状態で空間や霊界、あるいは他の天体に存在し、新しい天体での新たな生命活動を開始すべく、地球の造成を待っておりました」

――今でも自然発生しているものがあるのでしょうか。

「あります。ですが、潜在的には胚の状態で以前から存在しているのです。その例なら身のまわりに幾らでもあります。例えば人間や動物の体には無数の寄生虫が胚の状態で存在していて、生命がなくなると同時に活動を開始して腐敗させ、悪臭を放ちます。人間の一人一人が、言うなれば“眠れる微生物の世界”を内部に含んでいるのです」

〈人類の発生〉

――ヒトの種も有機的原素の一つとして地球に含まれていたのでしょうか。

「そうです。そして創造主の定めた時期に発生したのです。“人間は地のチリから造られた”という表現はそこから来ています」

――そのヒトの発生、および地上の他の全ての生物の発生の時期は確認できるのでしょうか。

「できません。あれこれと数字を並べる霊がいますが、何の根拠もありません」

――人類の胚が有機的原素の中に含まれていてそれが自然発生したとなると、今でも(生殖作用によってでなく)自然発生的にヒトの種が誕生してもよさそうに思えるのですが……

「生命の起原のことは我々にも秘密にされております。ただ断言できることは、最初の人類が発生した時に、すでにその内部に、その後の生殖活動によって繁殖していくために必要な要素を全て所有していたということです。他の全ての生物についても同じことが言えます」

――最初の人間は一人だったのでしょうか。

「違います。アダムは最初の人間でもなく、唯一の人間でもありません」

――アダムが生きていた時代を特定できますか。

「大体“創世記”にある通りです。キリストより四〇〇〇年ほど前です」

編者注――アダムという名で記録にとどめている人物は、当時地球上を襲った数々の自然災害を生き抜いた幾つかの人種の一つの長であろう。

〈人種の多様性〉

――地上の人種に身体的ならびに精神的な差異が生じた原因は何でしょうか。

「気候、生活形態、社会的慣習などです。同じ母親から生まれた二人の子供でも、遠く離れた異なる環境条件のもとで育てられると、それぞれに違った特徴を見せるようになります。とくに精神的には全く違ってきます」

――人類の発生は一か所だけでなく地球上の幾つもの地域で行われたのでしょうか。

「そうです。それも、幾つもの時代に分けて行われました。このことも人類の多様性の原因の一つです。原始時代の人間はさまざまな気候の地域へ広がり、他の集団との混血が行われたので、次々と新しいタイプの人類が生まれて行きました」

――その違いが種の違いを生んだのでしょうか。

「それは断じて違います。全ての民族で人類という一つの家族を構成しています。同じ名前の果実にいろいろな品種があっても、果実としては一つであるのと同じです」

――人類の始祖が一つでなく地球上で幾つも発生したということは、互いに同胞とは言えないことになるのではないでしょうか。

「創造主とのつながりにおいては全ての人種は一つです。同じ大霊によって生命を賦与され、同じ目的に向かって進化しているからです。人間はとかく言葉にこだわり、表現が異なると中身も異なるかに解釈しがちですが、言葉というのは不十分であり不完全なものです」

〈地球外の生息地〉

――宇宙空間を巡っている天体の全てに知的存在が生息しているのでしょうか。

「そうです。そしてその中でも地球は、人間が勝手に想像しているような、知性、善性、その他の全般的な発達において、およそ第一級の存在ではありません。数え切れないほど存在する天体の中で地球だけが知的存在が生息する場である――神は人類のために宇宙をこしらえたのだと豪語する者がいるようですが、浅はかな自惚れもここに極まれりという感じです」

――どの天体も地質的構成は同じなのでしょうか。

「同じではありません。一つ一つが全く違います」

――あれほどの数の天体がありながら、その組成が同じものが二つとないとなると、そこに生息している存在の有機的組成も異なるのでしょうか。

「当然です。地上でも魚は水の中で生きるようにできており、鳥は空を飛ぶようにできているのと同じです」

――太陽から遥か遠く離れた天体は光も熱も乏しく、太陽が恒星(星)の大きさにしか見えないのではないでしょうか。

「あなたは光と熱の源は太陽しかないとでも思っていらっしゃるのですか。また、ある天体上では電気の方が地上より遥かに重要な役割を果たしている事実をご存じですか。そういう世界でも地球と同じように眼球を使って物を見ているとでも思っていらっしゃるのですか」

訳注――カルデックの質問の中には時おり「おや?」と思うようなものが出てきて訳者を戸惑わせることがある。奥さんと共に私塾を開いて天文学、物理学、解剖学といった、当時としては最先端の学問を教えていたようであるが、百年以上も昔のことであるから、その幅も奥行きも現代とは比較にならないものであったことは容易に想像がつく。

この質問も太陽も恒星の一つで銀河系には二〇〇〇億個もの恒星があり、その中でもわが太陽はごく小さい部類に属するので、このような質問はナンセンスである。が、回答の中で眼球を必要としない知的存在がいることを暗示しているので、それが大きな暗示を与えてくれると思って訳出した。コウモリは声帯から出す超音波で一瞬のうちに距離を計って飛び回り、イルカも超音波で信号を出し合って連絡し合っているという。眼球や耳のない人間的存在がいても不思議ではないのである。

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