(1)暗黒の地上世界

霊的無知に陥っている地球人類

これまで地上世界には、本物の霊的知識がなかったため、人々は「霊的無知」の状態に陥ってきました。現在の地上人の中で、死後の世界について明瞭に知っている人は、ほとんどいません。もし死とともにすべてが消滅し無に帰してしまうとするなら、もし死によって富も名声も人間関係もなくなってしまうとするなら、誰も必死に努力しようとはしなくなるでしょう。誰も無理をしてまで高潔な人生を送ろうとは思わなくなるはずです。生きる意欲を失い、何のために生きているのか分からなくなってしまうことでしょう。

その結果、少しでも長生きをして、生きている間にやりたい放題のことをして、できるだけ人生を楽しもうと考えるようになります。とにかく手っ取り早く楽しもうとして、自分さえよければそれでいいと考えるようになり、他人のことなどかまっていられなくなります。そして自分の物欲と本能的喜びを満たすことだけが、人生の目的になってしまいます。

世の中には、地上の富と権力を手中に収めた一部の人間(独裁者)が存在します。またかねの力に任せて、何でもできると考える人間もいます。そうした者は例外なく、今あげたような物欲と本能的喜びをとことん追求する人生を送るようになります。一方、食べることに特別不自由しなくなった現代先進国の人々も、程度の差こそあれ同じように物質的欲望・本能的快楽を追い求め狂奔しています。“幸福”とは、多くのモノ・富・名声・権力を手に入れることであると考えています。そうした「物質的価値観」が、現代人の心を強く支配しているのです。

そして病気になって初めて、金や権力だけではどうにもならない現実に置かれていることに気がつくようになります。物質的価値観にとらわれた人々の心の底には深い絶望感が横たわり、人生に対する生きがいもなく、虚無きょむ主義・刹那せつな主義・快楽主義に翻弄ほんろうされるようになっています。

地上を支配してきた二つのガン

これまで地球人類は、霊的無知のために物質に支配されてきました。人間の心・精神・霊は物質の片隅に追いやられ、物質の中に閉じ込められてきました。従来の地上世界は、精神や霊が中心ではなく、物質と肉体が中心だったのです。地球人類は長い間、「物主霊従」「肉主霊従」の状態に置かれてきました。こうした物質欲支配・本能的快楽支配の状況は、二十一世紀を迎えた地球においても、そのまま継続されています。

霊的無知に陥っている現在の地上世界には、二つのガンが存在します。一つが「物質中心主義」、そしてもう一つが「利己主義」です。この二つのガンによって地球人類は霊的世界から切り離され、物質の中に閉じ込められ、霊性発揮の道が閉ざされています。この二つのガンは、多くの地球人類の人生を無意味なものにするだけでなく、地球全土を悲劇の蔓延する地獄さながらの世界に陥れています。戦争(人殺し)・貧困・飢餓・犯罪――こうしたものはすべて「物質中心主義」と「エゴイズム(利己主義)」から発生しているのです。

地上の宗教は、すべて失格

地球人類の霊的進化には、地上の宗教が大きく関わっています。しかしこれまでの宗教は、最低限の霊的知識や霊界の実情さえ、正しく人々に伝えてきませんでした。それどころか霊的事実から懸け離れた、子供だましのような教えを強制的に押し付け、人々を“霊的牢獄”の中に閉じ込めてきました。宗教は人類の霊的成長を促すどころか、反対に霊的成長を妨害してきたのです。霊界から見たとき、地球上のすべての宗教は失格です。

人類が地球上に誕生して以来今日に至るまで、人間はまさに物欲と本能に支配されてきました。宗教や思想は存在したものの、それらは人類を物欲から解放し、魂を救うことはできませんでした。宗教は政治権力者の独裁のための手段として利用され、地上世界に紛争と戦争を引き起こす元凶となってきました。

地上を支配する二つのガンは、本来は宗教によって克服されるべきものです。しかし現在の宗教に、それらの問題を解決する力はありません。宗教自らが霊的摂理から外れてしまっているからです。さらに宗教が霊的真理に対して、あまりにも無知であるからです。人々に正しい道を示す立場にある宗教が死後の世界を認めないようでは、とうていその責任を果たすことはできません。「唯物主義」と「利己主義」を克服する力を持っていない宗教では、もはや人々を救うことはできません。

キリスト教に代表される伝統宗教は、時間の経過とともに当初の純粋さと輝きを失って堕落し、組織エゴをむき出しにしてきました。そして人々を霊的救いから遠ざけ、霊的な暗黒世界をつくり上げてきたのです。一方、霊界からのインスピレーションを受けた霊能者によって、次々と新たな宗教が興されてきましたが、その光も長続きせず、やがて時の流れとともに物質の荒波に飲み込まれてしまいました。

霊界の悲劇

――幽界下層における“地獄的状況”

現在の地上世界には、無知・偏見・偽り・裏切り・迷信がはびこっています。それらが引き起こす結果は明白です。「物質主義」と「利己主義」から引き起こされる地上世界のさまざまな悲劇は、幽界の下層にも同時に悲劇を生み出すことになっています。何の霊的準備もできていない数十万もの人間が、毎日霊界入りしているのです。

霊界に入って間もない人間は、地上にいた時と何も変わっていません。彼らは肉体こそ脱ぎ捨てていますが、ただそれだけのことなのです。心も性格も変わっていません。習性も特徴も地上時代のままなのです。利己的な人間は相変わらず利己的であり、貪欲な人間は依然として貪欲です。そして無知な人間は、無知なままなのです。

彼らは地上時代の考えや習性を引きずったまま、幽界の下層で“地縛霊”として生き続けています。霊的な自覚が生じないかぎり、いつまでも地上時代と同じ状況が続くのです。霊界では、まさにこうした“悲劇”が現実に展開しているのです。

霊的無知がもたらす地上世界と幽界下層の悲劇

ホーム

はじめての方へ

関連サイト

サイト内検索

トップ