7章 ああ、真白き大霊よ
最近ではシルバーバーチの交霊会の様子がカセットテープに録音され、世界中の数え切れない人々によって愛聴されているが、古くさかのぼると、かつては蓄音機用に何枚か吹き込まれたこともあったのである(*今では廃盤となっている)。
最初のレコーディングはできぐあいから言うと失敗だった。マイクの位置が遠すぎたためであるが、シルバーバーチは一言も文句を言わないどころか、ではもう一枚いきましょうと言った。最初のは身内を失った人たちへの慰めのメッセージだったが、「こんどは何にしましょうか」とシルバーバーチの方から言うので、司会のスワッファーが「“新しい時代”について述べられては?」と提案した。
するとシルバーバーチは一瞬のためらいもなく「では始めます」と言って、合図とともに語り始めた。そして、ぎりぎりの時間内で終わった。残念ながらそのレコードはもう手に入らない。
こうしてその日は全部で四枚の録音を行った。祈りが二枚とメッセージが二枚だった。なんと、その四枚とも一秒の違いもない、同じ長さだった。
録音の要領は、スタートを知らせるために列席者の一人が一から九まで数えて、十のところで係の者がスイッチを入れ、それと同時にシルバーバーチが語り始め、終わる三十秒前に霊媒の身体に手を触れる。するとピッタリ最後の一秒のところで終わった。霊界でリハーサルをしてきたわけではないとのことだった。
では当日の録音の中身を紹介しよう。
「まず初めに生命の大霊に祈りを捧げます。
王の中の王、造化の大霊、完全なる摂理の背後の無限なる知性にあらせられるあなた――あなたは全知にして全能なる存在におわします。あなたは無始無終に存在したまいます。なぜなら、あなたの霊は全宇宙に満ち、すべてがあなたの反映だからでございます。
しかし同時にあなたの神性はおのれを人のために役立てんと努める者の人生の中にも示されております。なぜなら、そこにあなたの神性が本来の表現の場を見出し、発現すればするほど既得の権力、憎悪、残虐、迷信、そして無知と闘うことになるからでございます。
わたしたちは完全なる愛と叡智の権化にあらせられるあなたに敬虔なる讃仰の気持ちを捧げ、あなたを荘厳なる存在そのままに啓示せんと努めているところでございます。これまで幾世紀にもわたってあなたは、直観力と洞察力とをそなえた少数の者を例外として、人類によって誤解されてまいられたからでございます。
あなたは復讐心を燃やす嫉妬ぶかい暴君ではございませぬ。あなたは全生命の大霊にあらせられます。なぜなら、あなたの霊は全宇宙のすべての子らに宿りたまい、永遠にあなたと結びついているからでございます。あなたの霊ありてこそ子らの存在があるのでございます。あなたの霊ありてこそ子らは死の彼方の世界にも存在し続けるのでございます」
この祈りの長さは三分だった。二分半が経過し、レコードはあと三十秒しかないという時点での印象では、まだ半分しか終わっていないような雰囲気だった。が、ぴったり最後の一秒で終わった。
では次に、録音としては失敗に終わった、身内の人を失った人たちへの慰めのメッセージを紹介しよう。
「皆さんからシルバーバーチと呼ばれている霊から、死によって愛する人を永遠に奪われたと信じて嘆き悲しみ、目に涙を浮かべておられる人たちへ、慰めのメッセージを贈りましょう。
自ら死を体験したのち三千年の霊界生活を体験してきたこのわたしから是非とも申し上げたいのは、死は愛する者どうしを裂くことは絶対にできないということです。愛はすべての障害を打ち砕きます。愛は必ずやその愛する相手を見つけ出すということです。
愛する人がこの残虐と誤解と無知の世界から、内部の神性がより豊かに発現される世界へと連れて行かれたことを泣いて悲しむのはお止めなさい。神があなたの庭から一本の花を抜き取って神の庭へ植え代えられたことを悲しんではなりません。その庭で、あらゆる制約と束縛とから解放されて、内在する香りをより多く放つことになるのです。
死も生命の法則の一環であることを理解してください。生と死はともに大霊のものであり、ともに大霊の摂理を教えるために使用されているのです。涙をお拭きなさい。悲しむのは間違いです。なぜなら、愛する人は今もなおあなたの身近にいらっしゃるのです。死は愛を滅ぼすことはできないのです。大霊が永遠であるごとく愛も永遠なのです」
終わると係の者が
「今のをお聞きになってみられますか。一度だけなら傷つけずにおかけできますよ」と言うとシルバーバーチが――
「せっかくならこの霊媒が入神から覚めてからにしましょう。彼にも聞かせてやりたいですから……」と言った。
が、係の者は「二度かけても大丈夫ですよ」と言ってさっそくかけてみると、音声が低すぎてうまく録音されていないことがわかった。
マイクの位置が遠すぎたためだった。
係の者が「もう一度同じものをお述べになることができますか」と聞くと――
「いえ、それはできません。でも別のものならすぐに始められますよ」と言うので、さっそく次の録音に取りかかった。それは次のような祈りだった。
「真白き大霊に祈りを捧げます。
ああ、大霊よ。
聖なる創造主、王の中の王、全生命の背後の無限なる知性にあらせられるあなたを、わたしたちは在るがままのお姿、すなわち完全なる摂理として説き明かさんとしております。
あなたは幾世紀にもわたって誤解され、誤って崇拝されてまいりました。ある人種はあなたのことを残忍にして血に飢え、復讐をたくらみ、嫉妬ぶかく、自分への忠誠を誓う者のみを愛する神として崇めてまいりました。そして彼らはその神罰に恐れおののきつつあなたへ近づいておりました。
わたしたちはあなたを完全なる愛と叡智の権化として啓示いたします。それが完全なる摂理の働きを通して顕現しているのです。その摂理の中に、子等が生命の充実感と豊かさと限りない恩寵を見出すようにとの、あなたの深遠なる配慮がなされているのでございます。
わたしたちの望みはその摂理を地上へもたらし、それによって善意の子等がいっそうの努力と奉仕に励み、地上世界からあらゆる不平等と不正、あなたの王国の地上への実現を阻むものすべてをなくすことです。その目的へ向かってわたしたちは祈り、そして奮励いたします」
これでA面が終わり、続いてB面を始めたところ、シルバーバーチには珍しく発音を間違えるというハプニングが起きた。
「失敗しました」
シルバーバーチはそう言って、新しいレコードに替えてもらった。用意ができるとすぐに語り始めた。
「地上世界が暗黒に満ち、恐怖心が多くの人間の心を支配し、導きと慰めをいずこに求めるべきかに迷っている今、より高き界層に住み物質の境界を超えて見通すことのできるわたしたちは、自信をもって皆さん方に“万事うまく行っております”と申し上げます。
皆さんは新しい秩序の誕生を今まさに目撃しておられるのです。辺りをご覧になれば、利己主義と物質偏重と貪欲と強欲と残酷の上に築かれた古い世界が滅亡しつつあるのが分かります。スピリチュアリストをもって任じておられる皆さんは、大いなる真理の管理人でいらっしゃいます。前哨地を守る番兵として新しい時代の構築に協力してくださっているのです。
ご自分のことを
子等が大霊の用意されている恩寵を心ゆくまで満喫できる新しい世界の構築に、皆さんも参加しておられるのです」